イヤーモニター

イヤーモニター（イヤモニ）とは

イヤーモニター、通称「イヤモニ」は、ミュージシャンやオーディオエンジニアが、自身の演奏や音響を正確にモニタリングするために使用するヘッドホンの一種です。特にライブ演奏や放送現場など、周囲の騒音が大きい環境でその効果を発揮します。

概要

イヤモニは、単に音を聞くための道具ではありません。プロフェッショナルの現場では、以下のような目的で使用されています。

放送現場での使用: テレビやラジオの生放送では、アナウンサーやキャスターが、スタジオからの指示や連絡事項をリアルタイムで受け取るために使用されます。これにより、視聴者に気づかれることなく、スムーズな番組進行が可能になります。

ライブ演奏での使用:
音響モニタリング: ステージ上のミュージシャンは、自身の演奏やバンド全体の音響バランスを正確に把握する必要があります。イヤモニを使用することで、会場の反響や観客の声援に影響されることなく、クリアな音を聴くことができます。
ハウリング対策: ステージ上のモニタースピーカーを使用すると、マイクからの音がスピーカーに戻り、ハウリングが発生するリスクがあります。イヤモニを使用することで、この問題を回避できます。
同期演奏のサポート: コンピューター制御された楽器や照明などの視覚効果とライブ演奏を同期させるために、イヤモニを通じて一定のテンポ信号（クリック音）をミュージシャンに伝送します。
舞台進行の円滑化: 舞台監督からの指示や連絡事項を、演奏中にリアルタイムで受け取ることができます。

観客の歓声の取り込み: 一部のミュージシャンは、観客の歓声をマイクで拾い、モニター音にミックスしてイヤモニに流すことで、一体感を高める演出を行うことがあります。

歴史

イヤモニの原型は、1970年代頃から、有線のヘッドホンやイヤホンが使用されていました。1990年代に入ると、個々の耳の形状に合わせてカスタム制作された「カスタムIEM（インイヤーモニター）」が登場し、フィット感と遮音性が向上しました。

初期のイヤモニは、肌色の目立たないものが主流でしたが、現在では、半透明のものや、装飾が施されたものなど、デザインのバリエーションも豊富になっています。特に女性アーティストの場合、アクセサリー感覚でイヤモニを着用することもあります。

無線方式

無線式のイヤモニは、テレビ局やラジオ局などの放送局では、許可を受けた専用の周波数帯を使用して運用されています。ライブ会場などでの使用も同様に、業務用の無線周波数が使用されます。

日本国内では、ワイヤレスシステムとしてA型、B型、C型、D型が利用されていますが、プロの現場では主にA型とB型が使用されます。A型は陸上移動局免許が必要ですが、B型は免許不要で使用できます。

アマチュアでも、プロ仕様のイヤモニ機器を購入し、無線使用許可を取得すれば使用できます。また、レンタル業者から借りることも可能です。手軽な方法としては、簡易FM放送用送信機を使用して、音響ミキサーのモニター出力をFMラジオ受信機で受信する方法もあります。

起源

マイケル・サントゥッチは1985年に「Sensaphonics」を設立し、ミュージシャン用耳栓の製作を開始しました。1991年には、世界初となるカスタムIEM「ProPhonic Ⅳ」がリリースされました。これは、周囲の騒音を遮断しながら、必要最小限の音量のみをモニターできる画期的な製品でした。プラスチック製のシェルとソフトなチップを組み合わせたもので、世界で初めてBAドライバー（single drive）が搭載されたイヤホンでもあります。広音域帯で最大26dBの遮音性を実現しました。

1996年には、世界初となるdual driverモデルの「ProPhonic 2XP」にアップグレードされました。2001年には、広音域帯で最大37dB、8000Hzで45.5dBの遮音性を実現したシリコン製のイヤーモニター「Sensaphonics ProPhonic 2XＳ」がリリースされ、遮音性の低いプラスチック製のイヤーモニターが生産中止となりました。

使用例

ライブコンサート
テレビ・ラジオ番組の生放送
舞台公演

関連項目

ヘッドフォン
インイヤーモニター
演奏会
ニュースキャスター
* モニタースピーカー

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