陸上移動局

陸上移動局とは

陸上移動局とは、無線局の一種であり、主に陸上を移動しながら、あるいは特定の場所で停止中に使用される無線機のことです。具体的には、車載型の無線機や携帯型の無線機、さらには携帯電話端末（IP無線端末を含む）などが該当します。これらの無線機は、私たちの日常生活や様々な産業活動において、重要な役割を果たしています。

定義

陸上移動局は、総務省令である電波法施行規則第4条第1項第12号において、「陸上を移動中又はその特定しない地点に停止中運用する無線局（船上通信局を除く。）」と明確に定義されています。ここでいう「陸上」には、単に陸地だけでなく、河川、湖沼、その他これらに準ずる水域も含まれると定められています。

また、陸上移動業務は、同規則第3条第1項第8号において、「基地局と陸上移動局（陸上移動受信設備を含む。）との間又は陸上移動局相互間の無線通信業務（陸上移動中継局の中継によるものを含む。）」と定義されています。この定義により、陸上移動局は基地局との通信だけでなく、他の陸上移動局との直接的な通信も行うことが可能であることがわかります。

概要

陸上移動局は、移動局の一種であり、陸上での使用が前提となっています。かつては、船舶や航空機に持ち込んで使用できる無線機は「移動局」として扱われていましたが、現在では「携帯局」として免許されるようになっています。また、携帯電話事業者の移動基地局車やIP無線利用者が基地局と呼ぶ据置型の端末も、法的には陸上移動局に分類されます。

移動しながらの使用が前提となるため、陸上移動局の無線機やアンテナには、構造や電源容量に制約があります。そのため、主にVHF以上の周波数帯を用いて、見通し範囲内での通信に利用されることが多いです。

アンテナは、車両や携帯型無線機に直接取り付けられるか、内蔵されることが多く、構造が単純であることから、無指向性の垂直偏波のものが広く用いられています。

海上での使用

陸上移動局は、陸上だけでなく、河川や湖沼などの水域でも使用できます。従来、これらの水域の解釈は、防波堤の内側などに限定されていましたが、マリネットホン廃止に伴い、MCA無線移動機や携帯電話端末の利用範囲が拡大され、平水区域や沿岸区域でも使用できるようになりました。携帯電話事業者やMCA無線事業者は、約款において「これらに準ずる水域」を「沿岸の海域」と表現しており、おおむね領海（沿岸から約22km）を指すものとされています。

ただし、携帯電話やMCA無線は船舶局の代用にはならず、海上交通管制などの海上安全にかかわる通信には使用できません。また、基地局の配置に依存するため、必ずしも領海内で使用できるとは限りません。しかし、MCA無線では、沿岸から100kmを超える距離でも実用になる例があります。

単向通信

陸上移動局は、音声や画像の伝送、遠隔操作、無人移動体の操縦など、単向通信にも利用されます。具体的には、特定ラジオマイク、車載型FPU、産業用ロボット、920MHz帯の陸上移動局などが挙げられます。ヘリテレシステムのFPUやドローンの送信機は、携帯局として免許されます。

免許・登録

外国籍の者には、原則として陸上移動局の免許は与えられませんが、例外的に、自動車などの移動体に開設する無線局や、これらの無線局と通信するために陸上に開設する無線局は、免許が認められる場合があります。また、電気通信業務を目的として開設する無線局も例外として扱われます。

携帯電話端末やMCA無線移動機は、特定無線局として包括免許されます。また、特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則により認証された適合表示無線設備を使用する場合は、簡易な免許手続きが適用され、予備免許や落成検査が省略されます。中継機能を持つPHSの陸上移動局や、5GHz帯無線アクセスシステム、920MHz帯の陸上移動局は、登録局となります。

用途

陸上移動局は、電気通信業務用が大部分を占めており、そのほとんどが携帯電話端末です。その他には、鉄道、タクシー、バス事業者などの陸上運輸用、国家行政用（警察用を含む）、国および地方公共団体の防災行政用、消防用などがあります。

通信の相手方

陸上移動局は、原則として同一免許人内の通信に利用されます。ただし、電波法施行規則に定められた例外的なケースでは、他の免許人所属の陸上移動局や基地局との通信も可能です。これは、陸上移動業務の無線局は、本来、同一グループ内での情報共有を目的としているためです。

旧技術基準の機器の使用

無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正により、旧技術基準に基づく無線設備の免許は、2017年11月30日までとされました。また、使用期限は2022年11月30日までとされていましたが、コロナ禍の影響で、一部のものを除き、当分の間延期されています。ただし、cdmaOne、W-CDMA・CDMA2000の携帯電話用陸上移動局は、延長の対象外です。

無人[[航空機]]への携帯電話等の搭載

近年、ドローンなどの無人[[航空機]]に携帯電話を搭載し、画像伝送などに利用したいというニーズが高まっています。しかし、携帯電話の電波は地上での利用を前提としているため、上空での利用には、通信品質や地上への影響などの課題があります。そのため、携帯電話の電波を上空で利用するためには、実用化試験局の免許を取得し、試験計画を提出するなどの手続きが必要です。

運用

陸上移動局の運用は、無線局運用規則第4章に定められています。

操作

陸上移動局の操作には、原則として第三級陸上特殊無線技士以上の資格が必要ですが、多くの例外規定が存在します。特定無線局の無線設備や、適合表示無線設備のみを使用する無線局などでは、無線従事者の資格は不要です。また、基地局や陸上移動中継局の統制下にある場合は、他の無線局の無線従事者によって技術操作が管理されるため、無線従事者の資格は不要となります。

検査

落成検査や定期検査は、多くのケースで省略されます。特に特定無線局や適合表示無線設備を使用する場合には、簡易な免許手続きが適用されるため、これらの検査は免除されます。また、登録検査等事業者による点検の結果に基づいて、一部の検査が省略されることもあります。

沿革

陸上移動局の歴史は、1950年の電波法施行規則制定時にまで遡ります。当初は「陸上の移動体の移動局」と定義され、免許の有効期間は3年でした。その後、定義の変更や免許制度の改正を経て、現在の形に至っています。特に、1990年代以降は、携帯電話の普及に伴い、陸上移動局の数が急増しました。

諸外国の相当種別

各国の免許制度は、細部に違いがありますが、米国では、FCC rules title47 Part90 にある "land mobile station" が陸上移動局に相当します。

まとめ

陸上移動局は、私たちの生活に欠かせない無線通信技術です。その利用範囲は、携帯電話から業務用の無線機まで多岐にわたり、その利用は今後もますます広がっていくと考えられます。

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