イヨシロオビアブ

イヨシロオビアブについて

イヨシロオビアブ（学名：Hirosia iyoensis）は、アブ科に属する昆虫であり、日本国内では特に夏季に大量発生します。この昆虫の名前は、愛媛県の伊予面河渓で初めて記録されたことに由来していますが、地域によって様々な呼び名があります。たとえば、徳島県では「コスアブ」、富山県では「オロロ」、長野県では「ウルリ」、秋田県では「トシベ」、石川県では「ウルル」などと呼ばれています。日本固有種であり、その特徴的な生態が注目されています。

特徴

イヨシロオビアブは、全長約18mmの小型で吸血性の昆虫です。同じく吸血性のウシアブよりも一回り小さいことが特徴です。体全体は黒色ですが、胸の後端と腹部には鮮やかな白い帯が目を引きます。

このアブは川岸の木に留まり、動物を待ち受けてから集団で周囲を旋回し、身体に止まることで吸血の場所を探ります。吸血行動は通常3分ほど続き、特に明け方や夕暮れ時に活発になります。日中はその活動が鈍くなるため、主に薄明薄暮型の行動スタイルとされています。

生態

イヨシロオビアブは、特に夏の7月から8月にかけて大量に発生し、哺乳類を襲って皮膚を切り裂き、吸血を行います。この吸血は非常に痒みを引き起こし、長引く不快感の原因となります。また、それらの昆虫は生物から発せられる汗や黒色、二酸化炭素に引き寄せられる性質を持ち、自動車の排気ガスに反応して近づくこともあります。

幼虫の期間は約320〜360日で、落葉広葉樹の林床に生息しています。梅雨が長い年には、2年以上にわたり幼虫として生活することもあります。蛹からは約10日後に成虫が誕生し、その後の成虫の寿命は約1ヶ月です。イヨシロオビアブは一年に一回の世代サイクルを持ち、初回の産卵は幼虫期にためた栄養だけで行えるため、吸血は必要ありません。2回目以降は吸血を必要とする無吸血産卵性が特徴的です。

イヨシロオビアブ群

イヨシロオビアブはツナギアブ属に属し、その中には日本固有種の9種類が存在しています。これには、アオコアブ（Hi. humilis）、キンイロアブ（Hi. sapporoensis）、オオツルアブ（Hi. otsurui）、イヨシロオビアブ（Hi. iyoensis）などが含まれています。

文化的側面

そのユニークな特性から、イヨシロオビアブには地域によって面白い伝説が残っています。富山県の西部の地域では、イヨシロオビアブ（オロロ）が盆の時期に多く発生するため、これが平家の落人に関連付けられた伝承があります。また、同県南砺市の利賀村では、イヨシロオビアブをモデルとした「オロロ君」というゆるキャラが存在し、地域のキャラクターとして親しまれています。

このように、イヨシロオビアブはその生態や地域の文化に多大な影響を与えており、自然界と人間社会との深いつながりを示す存在となっています。

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