イルティシュ河の戦い

イルティシュ河の戦い

1306年、イルティシュ河での戦いは、カイシャンが指揮する大元ウルス軍と、チャパルが率いるカイドゥ・ウルス軍との激しい戦闘が繰り広げられました。この戦闘は、中央アジアにおけるオゴデイ家の衰退を引き起こし、結果的に大元ウルスの影響力が再確認されることになりました。

背景

この戦いは、1260年代に始まった帝位継承の争いによって生まれたカイドゥの自立から始まります。カイドゥは、中央アジアの諸勢力を統一し、最終的に強力な王権を樹立しました。その後、コクライ（クビライ）の死によって、両国間の均衡が崩れ、カイドゥは自らの権力を強化するために大元ウルスへの侵攻を開始しました。

カイドゥの死後、後継者問題が浮上し、オロスとチャパルの間での派閥争いが激化しました。ドゥアはチャパルを支持し、オゴデイ家の支配を強化しつつ、周囲の勢力との友好関係を築いていきました。このような背景の中、カイシャンが大元ウルスを指揮し、1306年のイルティシュ河の戦いに挑むことになります。

戦闘の経過

1306年7月、カイシャン率いる大元ウルス軍はアルタイ山脈を越えて攻撃を開始しました。最初の戦闘ではオロスが指揮する軍団に奇襲をかけ、こちら側に大きな利益をもたらしました。この攻撃により、多くのオロス軍が撃破され、オゴデイ家の重要人物たちが捕虜となりました。

一方で、アリクブケ家のメリク・テムルの動きが戦局をさらに複雑にしました。彼はチャパルに対抗する形でオゴデイ家内部での派閥争いを利用し、オゴデイ家の勢力圧迫を図ります。メリク・テムルがチャパルの軍を襲ったことにより、チャパル軍は混乱をきたし、最終的には多くの兵士が離脱しました。

その後、追い詰められたチャパルは、他の支援勢力から援軍を求めるも、ドゥアの軍団に包囲されてしまいます。8月になると、大元ウルス軍はついにイルティシュ河流域に進撃し、オゴデイ家の大多数を撃破しました。多くのオゴデイ家の王族が大元ウルスに投降する結果となり、この戦いによってオゴデイ家の権力はほぼ消滅しました。

戦闘の影響

この戦いはオゴデイ家にとって致命的な打撃となりました。中央アジアに生き残っていたオゴデイ家の王族は大元ウルスかチャガタイ・ウルスに降伏せざるを得なくなり、オゴデイ家の影響力は根底から崩れました。その中で最大の利益を得たのは、ドゥア率いるチャガタイ家でした。ドゥアはオゴデイ家の遺領を掌握し、自らの権力を強化する結果となりました。

ドゥアは1309年のクリルタイでチャパルを正式に廃位しました。これにより、チャガタイ・ウルスの形成へとつながる重要な一歩を踏み出すこととなったのです。また、オゴデイ家の王族はモンゴル帝国の他の勢力によって管理されることになり、再び影響力を持つことは困難となりました。

この戦闘を経て、カイシャンの名声が高まり、彼の指導力が将来の即位へとつながる道筋が開かれたことは、モンゴルの歴史において重要な出来事となっています。加えて、イルティシュ河の戦いを契機に中央アジアの地図が大きく塗り替えられることとなり、モンゴル帝国の一時代が幕を閉じました。

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