イルハム・アリエフ

イルハム・アリエフとは

イルハム・ヘイダル＝オグル・アリエフ（İlham Heydər oğlu Əliyev）は、1961年12月24日生まれのアゼルバイジャンの政治家であり、現在、同国の大統領を務めています。2003年10月31日に第4代アゼルバイジャン大統領に就任しました。彼の父親は、1993年から2003年までアゼルバイジャン大統領を務めたヘイダル・アリエフです。イルハム・アリエフは、父親の引退後、後継者として大統領に選出され、旧ソ連諸国で初めて親子による権力の世襲を実現した人物として知られています。

妻のメフリバン・アリエヴァは、ユネスコ親善大使などを務め、2017年からはアゼルバイジャンの第一副大統領として活躍しています。

生い立ちと経歴

イルハム・アリエフは、父ヘイダルがアゼルバイジャン国家保安委員会に所属していた頃、首都バクーで生まれました。バクーで初等・中等教育を受けた後、モスクワ国際関係大学に進学。1985年には同大学院で歴史学および国際関係論の修士号を取得し、その後1990年まで同大学で教鞭を執りました。

1991年にビジネスの世界に転身し、モスクワとイスタンブールで活動していましたが、1994年に父ヘイダルの大統領就任を機に帰国。アゼルバイジャン共和国国営石油会社第一副総裁に就任しました。大統領に選出されるまでこの職にあり、その間、1995年と2000年には国会議員にも選出されています。1997年からはオリンピック委員会委員長も務めるなど、父ヘイダルの下で政財界の要職を歴任しました。

大統領への道

ヘイダル・アリエフの健康不安が表面化して以降、イルハム・アリエフへの権力移譲が進められました。1999年には新アゼルバイジャン党の副党首に選出され、2003年8月には、父が病気療養のためにアメリカに渡った際、首相に就任。同年10月には大統領選挙に立候補し、父ヘイダルの後継者として与党の単独候補に指名され、大統領に就任しました。

大統領としての活動

イルハム・アリエフ政権は、父親から受け継いだ強権的な体制や政治腐敗、権力の世襲に対して国内外からの批判を受けています。しかし、対外的にはロシアからの支持を得ており、国際協調による政治・経済の安定を目指しています。

2008年、2013年、2018年と大統領選で再選を果たし、長期政権を維持しています。2013年の選挙では、投票開始前に選挙管理委員会が誤って当選確実を発表するという珍しい出来事もありました。

2016年には憲法改正を実施し、副大統領職の新設や大統領任期の延長、大統領選挙の候補者年齢制限の撤廃などが盛り込まれ、これにより長男への権力世襲を画策しているとの見方も出ています。2024年の大統領選挙でも92.1％の票を獲得し5選を果たしました。

ナゴルノ・カラバフ紛争

1990年代から事実上独立していたナゴルノ・カラバフ地方のアルメニア人勢力との紛争では、2020年に大規模な軍事作戦を実施し、領土の大部分を奪還しました。さらに2023年9月には電撃的な攻勢で事実上降伏させ、同地域を解体へと追い込みました。これにより、アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ地域の主権を回復し、アリエフ大統領は20周年の節目に、ハンケンディ（ステパナケルト）を訪問し、勝利演説を行いました。

2024年2月の大統領選挙を1年前倒しで実施した背景には、ナゴルノ・カラバフ奪還の成功があるとも考えられています。

まとめ

イルハム・アリエフは、アゼルバイジャンの政治を長年にわたり牽引してきた人物であり、その強権的な政治手法や権力の世襲については賛否両論がありますが、ナゴルノ・カラバフ紛争における勝利は、彼の長期政権を支える大きな要因となっています。彼の今後の動向は、アゼルバイジャンだけでなく、周辺地域にも大きな影響を与えると考えられます。

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