イワンのばか

イワンのばか

『イワンのばか』は、ロシアの民話に登場する特徴的な人物イワンを中心に展開される物語です。イワンは非常に素朴で愚直な男として描かれていますが、彼の誠実さと無邪気さが奇跡的な幸運をもたらすことになります。この物語は、レフ・トルストイによる作品など日本語でも数多く翻訳されており、特に帝政ロシア時代に入り知名度が上がりました。

制作と発表

この物語は1885年9月頃に書かれ、翌1886年に発表されました。原題は非常に長く、内容をまとめますと「イワンのばかとその二人の兄、軍人のセミョーンとたいこ腹のタラスと、口のきけない妹マラーニャ、そして大悪魔と三匹の小悪魔」に関連するストーリーです。日本語訳では多様なタイトルがつけられ、例えば『イワンの馬鹿』や『大悪魔と小悪魔』などが存在します。

あらすじ

物語の舞台はある国で、イワンは彼の兄弟、軍人のセミョーンとたいこ腹のタラス、そして唖の妹マルタと一緒に暮らしています。兄たちが金銭に困って実家に戻ると、父親に財産を分けてほしいと懇願します。父親は困惑し、イワンにその旨を伝えます。素朴なイワンは「彼らに分けてあげなさい」と言い、この結果として兄たちに財産が分け与えられます。

その後、兄たちの間に諍いを引き起こそうとした悪魔は、計画がうまくいかずに苛立ちを募らせ、次々と小悪魔を送り込みます。セミョーンとタラスは小悪魔に翻弄され苦境に立たされますが、イワンは彼らの攻撃に屈せず、逆に小悪魔たちを捕まえます。小悪魔たちは自らの魔法の力を使って、イワンに助けを求めてきます。

イワンは小悪魔たちを解放する条件として、「イエス様の恵みを」と言い放ち、彼らは地中深くに逃げていきます。イワンはその後、手に入れた宝を兄たちに分け与え、共に豊かになっていくのです。兄たちはイワンのおかげで王となり、イワンは国の王女のために奇跡を起こし、王国の王にまで上り詰めます。

ただし、イワンは労働を重んじていましたので、王になっても地道に畑仕事を続け、彼の王国の掟は「働く者のみが食べる権利を持つ」というものでした。彼の妻は気に入ったようで、マルタに農作業を教え、イワンを支援することになります。

大悪魔の登場

後の展開では、大悪魔が人間の姿に変身してイワンたちに近寄りますが、イワンの国の人民は素朴で、悪魔の策略にはひっかかりません。逆に、大悪魔は次第に自らの食べ物も得られずに困窮し、最後にはイワンに嘲られる結果となります。彼は「頭で働けば楽をして儲かる」と演説しますが、誰も耳を傾けません。最終的には力尽き、彼自身がその策略を自らに振りかけられる形で破滅するのです。

この物語は、単なる愚かさだけではなく、誠実さや努力を重視する価値観が描かれており、またノスタルジックな民話として多くの人々に愛され続けています。

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