イワン・イリイン

イワン・アレクサンドロヴィチ・イリイン

イワン・アレクサンドロヴィチ・イリイン（1883年 - 1954年）は、ロシアの政治哲学者および宗教哲学者であり、特にロシアファシスト運動においてその影響力を持っていました。彼はロシア革命後、白系ロシア人のジャーナリストとして活躍すると同時に、ロシア全軍連合のイデオローグとしても知られています。

生涯の歩み

イリインはモスクワで貴族の家庭に生まれ、その背景には多くの歴史的要素がありました。彼の父はクレムリンで生まれ、母はドイツ系ロシア人でありました。母はロシア正教に改宗し、家族は文化的にも多様な影響を受けていました。1901年にモスクワ大学法学部に入学する際、彼は既に政治家や哲学者としての素質を示していました。大学在学中にロシア第一革命が始まり、彼はこの運動に消極的でしたが、キリスト教哲学者パーヴェル・ノヴゴローツェフに影響を受け、哲学へと深い関心を持つようになりました。

ロシア革命とその影響

1917年の2月革命には当初期待を抱いていましたが、ボリシェビキ政権の誕生によってその期待は裏切られました。イリインは革命を「国家による利己的な略奪」へと変貌させたと非難し、その後ロシアの崩壊を恐ろしい事態と捉えるようになります。1918年にモスクワ大学の教授に就任し、その後の数年間、様々な学術的著作を発表しました。

亡命生活

1922年、イリインは迫害を避けるために国外へ逃れ、主にベルリンで亡命生活を送りました。彼は白系ロシア人の思想的リーダーとして、様々な講義や論文を通じて影響力を持ち続けました。しかし1938年にはナチ政府からの圧力を受け、スイスに移り住むことになりました。彼の思想は、特に白色運動の中心的なイデオローグとして認知され、亡命生活中に多くの著作を発表しました。彼の代表作にはヘーゲル哲学に関するものがあり、彼自身の法学理論を発展させたことでも知られています。

思想の核

イリインの思想には、ロシアの運命や国家に対する深い洞察が含まれています。彼は革命の原因をロシア人の誤った私有財産観や、権力の濫用に求め、その解決策として道徳と敬虔さに基づく「法意識」の発展を提唱しました。彼は、法と正義の概念が国家の基盤であるとの信念を持ち、それに基づいた強い国家の姿勢を支持しました。

君主制と法意識

イリインはまた、君主制の重要性についても論じました。彼の著作『君主制について』では、現代における君主制の本質を探求し、共和国との違いを考察しました。なぜなら、彼にとって法律は国家の基盤であり、正義は法的な構造の中で形成されるものであったからです。

ファシズム観と影響

彼の考えは、特にナチスやファシズムに関する見解においても影響を与えました。イリインは当初、ヒトラーの政策を支持していましたがやがてその反ユダヤ主義的な側面に幻滅します。それにもかかわらず、彼の思想は後のロシア民族主義者や政治家に大きな影響を与え、プーチン政権下でも彼の著作が再評価されています。

まとめ

イワン・イリインの哲学と思想は、ロシアの歴史と政治において深い影響を持ち続けています。彼の著作や見解は、現在でも多くの人々に引用され、ロシアの国家観や社会思想に対して重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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