イングランドの非都市ディストリクト

イングランドの地方行政区分：非都市ディストリクト

イングランドの地方行政は複雑な階層構造を有しており、その中で非都市ディストリクトは重要な役割を担っています。本稿では、非都市ディストリクトの概要、歴史、現状、そしてスコットランドやウェールズとの比較を通して、その実態を詳しく解説します。

非都市ディストリクト：二段構造の地方行政

イングランドの地方行政は、大きく分けて二段構造となっています。上位の区分である非都市カウンティの下に位置するのが、非都市ディストリクトです。多くの非都市カウンティは、カウンティ・カウンシルと複数のディストリクト・カウンシルによって運営されています。ディストリクト・カウンシルは、さらにバラ・カウンシルやシティ・カウンシルといった、称号を持つ自治体で構成されています。

バラとシティの称号

多くの非都市ディストリクトは、「バラ（Borough）」の称号を有し、そのカウンシルは「バラ・カウンシル」と呼ばれます。この称号は、国王からの特許状によって与えられ、歴史的に長い伝統を誇る自治体の証です。一方、「シティ（City）」の称号を持つディストリクトも存在し、オックスフォードやエクセターなどがその例です。シティとバラの称号は、行政上の権限に直接的な違いをもたらすわけではありませんが、歴史や伝統、地域アイデンティティにおいて重要な意味を持ちます。ただし、単一自治体や都市ディストリクトの中には、シティやバラの称号を持つものも多く存在するため、称号と行政区分は必ずしも一致しません。

単一自治体と都市ディストリクトとの違い

単一自治体は、儀礼上はカウンティに属しますが、行政上は独立した議会によって運営されています。これは、非都市ディストリクトとは異なる行政構造です。一方、都市ディストリクトは、1974年の地方行政改革によって都市カウンティの中に設置された自治体であり、非都市ディストリクトとは異なる歴史的背景を持っています。

歴史的変遷と地方行政改革

1899年以前は、イングランドの地方自治体は地方ディストリクト、都市ディストリクト、都市バラ、カウンティ・バラ、大都市バラの5種類に分類されていました。しかし、20世紀後半に行われた地方行政改革によって、これらの区分は廃止され、現在の体系が確立されました。非都市ディストリクトは、1974年の地方行政改革において、グレーター・ロンドン以外の地域を都市カウンティと非都市カウンティに分割した際に、非都市カウンティの下位区分として設置されました。当初は296の非都市ディストリクトが存在していましたが、1990年代と2009年の改革を経て、現在は192に減少しています。また、この過程で55の自治体が単一自治体に昇格しました。

スコットランドとウェールズとの比較

ウェールズでは、1974年から1996年まで、イングランドとほぼ同様の二段構造の地方行政制度が存在していました。しかし、1996年の地方行政改革によって、二段構造は廃止され、全ての自治体が単一自治体となりました。グレーター・ロンドンに相当する大都市圏を持たないウェールズにおいては、非都市ディストリクトという区分は現在存在しません。スコットランドも同様に、1996年の地方行政改革によって二段構造が廃止され、非都市ディストリクトは存在しません。

まとめ

非都市ディストリクトは、イングランドの地方行政において重要な位置を占める行政区画です。その歴史、現状、そして他の地域との比較を通して、イングランド地方行政の複雑さと多様性を理解することが重要です。バラやシティの称号、単一自治体との違い、そして地方行政改革による変遷を理解することで、イングランドの地方行政システムへの理解が深まるでしょう。

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