イングリッシュ・エレクトリック ライトニング

イングリッシュ・エレクトリック ライトニング

イングリッシュ・エレクトリック ライトニングは、イギリスの航空機メーカーであるイングリッシュ・エレクトリック社が開発した超音速ジェット戦闘機で、主にイギリス空軍において使用されました。この機体は、1960年に同社の航空機部門が国策企業であるBAC（ブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション）に統合されたため、BAC ライトニングとも呼ばれています。"Lightning"は、英語で「稲妻」という意味を持ち、その名が示す通り、高速性と力強さを秘めた戦闘機です。

特徴

ライトニングは特異なエンジン配置を採用しており、二基のジェットエンジンが前後に配置されて縦に並んでいます。この配置は他の量産機では見られない斬新なもので、機体の空気抵抗を減らす利点があります。また、片方のエンジンが停止してもトリムが変化しないという特徴があります。しかし、この設計によってエンジンの整備作業が複雑になり、燃料タンクを胴体内に設置できないという欠点もありました。さらに、エンジン周囲の高温やオイル漏れの問題から、空中火災のリスクも抱えていました。

主翼はデルタ翼の改良型で、空力的には削減された内縁部分を持ち、結果的にクリップトデルタ翼の先駆けとして認識されています。しかし、この構造改善により、翼内に搭載できる燃料が減少し、航続距離や搭載兵器の制約が生じました。

それでも、ライトニングはマッハ2.0の速度を誇り、卓越した運動性と制空能力を持ち、同時期の他の戦闘機に対抗する力を秘めていました。その強力なエンジン推力は、後の名機であるF-15 イーグルやSu-27 フランカーに引けを取らない程でした。また、革新的な照準器とアビオニクスが装備されており、当時としては先進的なレーダー性能を有していました。

開発経緯

イギリスの軍事予算が主な政権の影響で制限される中、アメリカやソ連が先進的な航空技術を持っていたため、イギリスは超音速機開発の遅れを余儀なくされました。1947年、軍需省は超音速機の研究計画を公表し、イングリッシュ・エレクトリック社のテディ・ペッターが主任技師としてチームを率いて超音速迎撃機を目指しました。1949年には、ER.103を元にした計画が承認されましたが、最初の試作機P.1は、様々なエンジンの採用の過程で試行錯誤が続きました。

試作機P.1Aは1954年に初飛行し、さまざまな改良を経てP.1Bが製造される際には、強力なエイヴォンエンジンを搭載しました。1957年には量産型ライトニング F.1が発注され、イギリス空軍によって実戦配備が始まりました。しかし、1957年の国防白書により、有人機からミサイルへの転換が謳われ、ライトニングを以てイギリスの最後の有人戦闘機と位置付けられました。

実戦配備とその後

ライトニングは1960年にイギリス空軍の第56飛行隊に配備され、招待されたエアショーでの展示の際には注目を集めました。防空任務に従事し、1960年代には西ドイツやキプロス、シンガポールにも展開しました。その運動性は、高高度での任務をはじめとして、低空での敵機に対する迎撃でも有効に機能しました。

1966年にはライトニング F.2が開発され、新たなジェットエンジンが搭載され、更なる性能向上が図られました。F.3型では機関砲の撤去やレーダーの改良が施され、更に70機が生産されました。また、F.6型では胴体下部の燃料タンクが大型化され、戦闘能力の向上が図られました。

ライトニングは1980年代まで運用され続け、最終的にはファントムやトーネード ADVにバトンタッチされました。その後はエアショーでの展示や一部機体が遊覧飛行に使用される等、長い歴史を経て退役しました。

海外での使用

ライトニングはアラビア半島いくつかの国でも採用され、主に対地攻撃に使用されました。サウジアラビアとクウェートがこの機体を導入し、少数ながら運用が続けられました。特に、サウジアラビアではイエメンとの紛争において実際の戦闘に使用されました。

まとめ

イングリッシュ・エレクトリック ライトニングは、そのユニークな設計と性能から、イギリスの航空機産業の重要な一翼を担いました。戦闘機としての役割を全うし、歴史に名を刻む存在となった特別な機体です。

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