インターナショナル・リース・ファイナンス

インターナショナル・リース・ファイナンス・コーポレーション (ILFC)

概要

インターナショナル・リース・ファイナンス・コーポレーション（International Lease Finance Corporation）、通称ILFCは、かつてアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスに主要な拠点を構えていた、世界有数の航空機リース専門企業でした。

同社は、主要な航空機メーカーであるボーイングやエアバスが製造した旅客機や貨物機を多数保有し、世界中の航空会社に対してリース供与することを事業の中核としていました。その顧客には、エア・カナダ、エールフランス、ルフトハンザ、アメリカン航空といった大手キャリアが名を連ねており、航空業界における重要なプレイヤーの一つでした。

設立当初は独立した企業でしたが、後に多国籍保険事業を展開するアメリカン・インターナショナル・グループ（AIG）の傘下に入りました。しかし、その後のAIGの経営問題や、航空機リース業界の再編の中で、最終的に2014年に同じく大手航空機リース企業であるエアキャップ・ホールディングスによって買収され、その企業としての歴史に幕を下ろしました。

設立からAIG傘下へ

ILFCは、1973年に航空機リース事業の将来性に着目した3人の人物によって設立されました。その創設者は、レスリー・ゴンダ氏、その息子であるルイス・L・ゴンダ氏、そして後に航空機リース業界の伝説的人物となるスティーブン・F・ウドヴァーヘイジー氏です。彼らは航空機を自社で購入し、それを必要とする航空会社に貸し出すというビジネスモデルを確立し、事業を急速に拡大させていきました。

設立から約17年後の1990年、ILFCはアメリカの大手保険会社であるAIGに買収され、その一員となりました。この買収に伴い、創業者であるゴンダ親子は経営の第一線から退きましたが、もう一人の創業者であるウドヴァーヘイジー氏は引き続き経営に携わり、最高経営責任者（CEO）として2010年まで会社を率いました。

事業展開

ILFCは、世界中の航空会社に対して、ボーイング社製およびエアバス社製の多種多様な航空機をリースしていました。その顧客基盤は非常に広く、北米、ヨーロッパ、アジアなど、グローバルに展開していました。

興味深い点として、ILFCがボーイング社に発注した航空機には、Q8という独自の顧客識別コードが付与されていました。これにより、例えばボーイング747-400型機であれば747-4Q8、ボーイング767-300ER型機であれば767-3Q8ER、ボーイング777-200ER型機であれば777-2Q8ERといった形式名で識別されました。これは、ILFCがボーイングにとって重要な顧客であったことを示す証でもあります。

AIGの経営危機とILFC

2007年に表面化した、いわゆるサブプライムローン問題は、世界的な金融危機へと発展しました。この金融危機は、ILFCの親会社であるAIGに深刻な打撃を与えました。AIGは、金融商品の関連で巨額の損失を計上し、経営が極めて不安定な状況に陥ったのです。

AIGが資金繰りに窮する中で、資産売却による資金確保が喫緊の課題となりました。その有力な売却対象の一つとして、財務的に健全であり、価値の高い航空機アセットを多数保有していたILFCが挙げられました。当時、ILFCの創業者であり、航空機リース業界で絶大な影響力を持っていたスティーブン・Ｆ・ウドヴァーヘイジー氏が、ILFCの有力な買収候補として名前が挙がっていました。

しかし、状況は予測とは異なる方向に進みました。2010年2月、ウドヴァーヘイジー氏は長年率いてきたILFCを退職することを発表しました。そして、驚くべきことに、彼は間もなく新たな航空機リース会社、エア・リース・コーポレーションを設立したのです。

親会社AIGの経営悪化は、ILFC自身の資金調達環境にも悪影響を及ぼしました。AIGの信用不安により、ILFCが市場から資金を借り入れる際のコスト（金利）が上昇してしまったのです。資金調達が困難になったILFCは、保有する航空機の一部を売却せざるを得なくなりました。2010年4月には、保有する航空機の中から53機を、オーストラリアの大手投資銀行であるマッコーリー銀行に約20億ドル（当時のレートで2000億円弱）で売却することを決定しました。これは、当時のILFCが直面していた厳しい資金繰りの状況を示す出来事でした。

終焉

AIGの経営再建プロセスが進む中で、ILFCの売却は不可避となりました。いくつかの交渉を経て、2014年にILFCは、アイルランドに拠点を置く世界的な航空機リース企業であるエアキャップ・ホールディングスに買収される形で、その独立した企業としての活動を終えました。

ILFCは、設立から買収されるまでの約40年間、世界の航空業界において航空機リースというビジネスモデルの発展に貢献し、多数の航空会社に機材供給を行う重要な役割を担いました。その歴史は、航空機リース業界における一つの大きな章として記憶されています。

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