インターネット監視財団とウィキペディア

2008年のウィキペディアアクセス遮断事件

2008年12月、インターネット監視財団（IWF）がウィキペディア英語版の記事に対してアクセス禁止措置を取ったことが大きな話題となりました。この事件は、児童ポルノに関する法律とインターネットコンテンツの自由な流通についての議論を引き起こしました。

事件の発端

問題となったのは、スコーピオンズのアルバム『ヴァージン・キラー』のカバージャケットで、割れたガラス越しに少女がヌードで描かれた画像です。IWFは、この画像を児童ポルノ法に基づき「潜在的に違法なコンテンツ」とみなし、ブラックリストに登録しました。結果として、イギリスの主要なインターネットサービスプロバイダ（ISP）の多くがこのページへのアクセスを遮断しました。

背景

イギリスでは、児童ポルノなどの違法なコンテンツに対するフィルタリングが厳格に行われており、2007年には児童搾取防止のための義務付けが導入されました。このような背景の中、IWFは違法コンテンツの監視と通報を行っている組織として機能していました。

IWFの通報を受けて、イギリス国内のISPは即座にフィルタリングを実施し、ウィキペディアへのアクセスを遮断しました。この措置により、多くのユーザーはウェブサイトへのアクセスに制限を受けることになりました。

ウィキペディアの立場

ウィキペディアの運営団体であるウィキメディア財団は、IWFの決定に抗議し、アクセス制限が一部のコンテンツだけでなく、全体のデータにも及んでいる点を強調しました。ウィキメディアは、法律上問題がないと考えられるコンテンツまでが不当に検閲されたとして、その撤退を求めました。

影響および反応

本事件はインターネットの検閲とその影響について広範な議論を巻き起こしました。多くの専門家やアナリストは、今回のフィルタリングが「ストライサンド効果」と呼ばれる現象を引き起こし、逆に画像や情報の拡散を助長する結果となったと指摘しました。

さらに、遠くアメリカなど他の国でも、提供しているコンテンツに対する呼びかけが高まり、世界中のインターネットユーザーに影響を与える事態となりました。IWFの行動は、インターネットの自由や検閲に関する議論がより重要であることを示しています。

アクセス制限の撤回

最終的に、事態を受けたIWFは、ウィキペディア関連のページに関するアクセス禁止措置を見直し、すべてのブロックを解除することに決定しました。この結果、IWFは今後、国外にホストされた画像に対してはブラックリストには追加しないとの方針を発表しました。

この出来事は、インターネット上での情報アクセスの自由と、それを巡る法律との緊張関係を再び浮き彫りにし、それゆえに今後のウェブコンテンツの管理方法についても議論を促進するきっかけとなりました。

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