インチョン!

映画『インチョン!』の概要

1981年、アメリカで公開された映画『インチョン!』（Inchon!）は、朝鮮戦争における仁川上陸作戦を題材にした作品です。タイトルはこの作戦に由来し、国際的な注目を集めました。本作は、著名なキャストに加え、テレンス・ヤング監督やジェリー・ゴールドスミスの音楽といった一流のスタッフが関わっていることから、期待が寄せられました。しかし、映画は公開直後から大きな批判を受け、興行成績も不振に終わり、制作費4600万ドルに対して興業収入はわずか350万ドルという結果となりました。この損失は、当時としては驚異的な4410万ドル、約110億円にも上り、最悪の赤字を記録した映画として後世に語られることになりました。

映画制作の背景

この映画の制作には、創始者文鮮明が大きく関与しています。彼は、神から映画制作の指示を受けたと主張し、実業家のミツハル・イシイに出資を指示しました。当初はイエス・キリストの物語を映画化する計画でしたが、最終的にはダグラス・マッカーサーを主人公とする仁川上陸作戦をテーマにした作品として制作が進められました。本作は、文鮮明が提唱した「神の真理シリーズ」という一連の映画の第一作に位置づけられており、全15作から成る大プロジェクトとされていました。

製作過程のトラブル

映画の監督にはテレンス・ヤングが起用されましたが、制作が長引いた理由は多岐にわたります。特に、國際勝共連合の会長として映画製作に素人であった石井光治が関与したため、多くのトラブルが発生しました。撮影中には台風によるセットの倒壊や、通訳ミスによって撮影をやり直す必要が生じるなど、多くの不手際がありました。これにより、撮影期間は実に5年間にまで及び、契約を超過することとなりました。

また、スタッフやキャストの中には、統一教会がスポンサーであることに対して不信感を抱く者も多く、撮影現場の士気が低下する要因となりました。その結果、ギャラの支払いが現金で行われることになり、とりわけローレンス・オリヴィエは追加報酬の現金支払いを要求するなど、金銭面でのトラブルが続発しました。このような状況下で、映画のクオリティやスケジュールが保たれることは困難でした。

評価と影響

公開された『インチョン!』は、カンヌ国際映画祭にも出品されましたが、批評家の評価は厳しく、アメリカ国内でも興行が振るわず、何度も編集し直しての上映にもかかわらず、結果は芳しくありませんでした。最終的には、制作費を回収できず、映画は「世界最悪の赤字を作った作品」としてその名を残すこととなりました。この惨憺たる結果を受けて、文鮮明が手掛けた「神の真理シリーズ」は頓挫し、一作のみで終わることとなります。

受賞歴とその後

『インチョン!』は、ゴールデンラズベリー賞にて最低作品賞や最低監督賞など、計4部門にノミネートされ、実際に受賞するという不名誉を得ました。映画は公式にビデオ化やDVD化されることはなく、現在は限られたチャンネルでの放映やYouTubeなどでのみ鑑賞可能となっています。映画業界において、この作品は奇跡的な背景を持ちながらも、その評価は最悪の部類として記憶に留められ続けています。

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