インディアナポリス交響楽団

インディアナポリス交響楽団（Indianapolis Symphony Orchestra）は、アメリカ合衆国のインディアナ州インディアナポリスに拠点を置く、歴史あるオーケストラです。

楽団の歴史は1930年、現地のヴァイオリン教授であったフェルディナント・シェーファーが創設したことに始まります。初期は地域密着型の活動でしたが、1937年にファビエン・セヴィツキー（著名な指揮者セルゲイ・クーセヴィツキーの甥）が初代音楽監督に就任すると、楽団は大きな転換期を迎えました。この時期に団員は完全なプロフェッショナルとなり、定期的な週給が支払われる体制が整えられました。プロ化に伴い、楽団の演奏水準は飛躍的に向上し、目覚ましい発展を遂げました。1930年代末にはNBCやミューチャルラジオといった主要な放送網に進出し、1940年代から1950年代初頭にかけてはRCAから一連のレコード録音をリリースするなど、メディアを通じた活動も積極的に展開しました。

1956年にはアイズラー・ソロモンが音楽監督に就任。彼の指導のもと、インディアナポリス交響楽団はアメリカ国内各地はもちろん、海外への演奏旅行も積極的に行うようになりました。これらの国内外での活発な演奏活動が高く評価され、楽団はアメリカ合衆国国務省賞を受賞するという栄誉に浴しました。

1976年、ジョン・ネルソンが楽団の指揮を執るようになると、活動の拠点をインディアナポリスのダウンタウンにあるヒルベルト・サークル・シアターへと移転しました。この新しい本拠地から、ナショナル・パブリック・ラジオ（NPR）やパブリック・ブロードキャスティング・サービス（PBS）といった公共放送での演奏機会が増加しました。また、ニューヨークのカーネギー・ホールやワシントンD.C.のジョン・F・ケネディ・センターといったアメリカ国内の主要なコンサートホールでも頻繁に公演を行うようになり、その存在感を高めていきました。ネルソン時代には、1987年に楽団として初となるドイツへの国外ツアーを成功させています。

1987年にネルソンの後任としてレイモンド・レッパードが音楽監督に就任しました。彼は楽団のシーズンを年間52週にわたる通年制へと移行させる重要な改革を実行しました。これにより、楽団は一年を通じて安定した活動を行うことができるようになり、Koss Classicsレーベルに多数の録音を残すなど、録音活動も活発に行いました。さらに、地元のラジオ局WFYI-FMでは、週1回の演奏放送番組「インディアナポリス・オン・ジ・エア」が開始され、地域への貢献も深めました。現在、インディアナポリス交響楽団は、アメリカ合衆国において年間を通じて演奏活動を行っている、わずか18の主要なオーケストラの一つとしてその地位を確固たるものにしています。

2000年代以降も、楽団は優れた音楽監督たちを迎えて活動を継続しています。マリオ・ヴェンツァーゴ（2002年-2009年）、クシシュトフ・ウルバンスキ（2011年-2021年）が音楽監督を務め、新たなレパートリーや解釈に挑戦しました。2024年からは準メルクルがこの任に就いています。

クラシックプログラムに加え、インディアナポリス交響楽団の特筆すべき活動としてポップス部門があります。1982年から20年間にわたり、エリック・カンゼルが首席ポップス指揮者として活躍し、幅広い聴衆に親しまれるプログラムを展開しました。その後、ジャック・エヴァリーがその任を引き継ぎ、現在も楽団の重要な活動の一翼を担っています。

このように、インディアナポリス交響楽団は、創設以来、歴代の音楽監督や関係者の尽力により着実に発展を遂げ、現在ではアメリカを代表するオーケストラの一つとして、質の高い演奏と多様な活動を通じて多くの人々に音楽を届けています。

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