インディア・ペールエール

インディア・ペールエール (IPA) のすべて

インディア・ペールエール（India Pale Ale; IPA）は、中程度からやや高めのアルコール度数を持ち、銅色のような明るい琥珀色が特徴のエールビールです。最大の特徴は、ホップによる強い風味と苦味であり、しばしば麦芽のフレーバーも伴います。IPAは、一般的にペールエールのカテゴリーに分類されます。

IPAの歴史

起源

IPAは、17世紀に生まれた初期のペールエールを起源とします。元々「ペールエール」は、淡色麦芽を使用して醸造されたエールを指していました。18世紀初頭のペールエールは、現代のIPAとは異なり、ホップの風味が軽いビールでした。18世紀半ばには、コークスで焙煎された麦芽を使用することで、淡色のビールが製造されるようになりました。ホップの苦味が豊かな淡色のオクトーバービールは、地主階級の間で人気を博し、醸造後2年間セラーで貯蔵されるのが一般的でした。

インドとの関係

18世紀末、ボウ醸造所のジョージ・ホジソンは、インドへのビール輸出で名を馳せました。ボウ醸造所のビールは、その立地と18ヶ月という寛大な支払い猶予期間により、東インド会社との取引で人気を集めました。ホジソンのオクトーバービールは、航行条件が良好であったこともあり、インドの消費者にも好評でした。19世紀初頭、ボウ醸造所はホジソンの息子たちが経営を引き継ぎましたが、その経営手法は顧客離れを招きました。

バートンの台頭

同時期、バートンの醸造所は、ロシア市場の喪失により新たな輸出先を模索していました。東インド会社の要請を受け、オールソップ醸造所は、ホジソンのインド輸出用ビールを参考に、ホップの苦味が豊かなペールエールを開発しました。バスやソルトなど、バートンの他の醸造所もこれに追随し、バートンの水を使った醸造が、IPAの風味を向上させ、商人やインドの顧客に好まれるようになりました。1840年頃には、イギリスで「インディア・ペールエール」として知られる輸出用のペールエールの需要が増加し、イギリス国内でも人気を博しました。

アメリカでの進化

20世紀後半のアメリカのクラフトビール革命において、醸造家たちは古いスタイルのビールに着目し、1890年から1990年代にかけてアメリカで作られていたP. Ballantine and Sons Brewing CompanyのBallantine IPAからインスピレーションを得ました。アメリカ産ホップの強い風味と香りを再現するのに適しており、最初のアメリカンIPAとされるAnchor Brewing CompanyのLiberty Aleは、1975年の醸造以来、現在も販売されています。

21世紀に入り、カリフォルニア州沿岸部でウエストコーストIPAと呼ばれるIPAが登場し、人気を博しました。ウエストコーストIPAは、柑橘系や松の香りに加え、強い苦味と大麻のような風味が特徴で、ドライでクリスピーな味わいが特徴です。

2023年5月、アメリカのBrewers Associationは最新のビアスタイルガイドラインを発表し、ウエストコーストスタイルIPAを追加しました。ガイドラインでは、高発酵でホップの風味が強く、ドライでさわやかな後味が特徴とされています。ただし、ウエストコーストIPAは流動的なものであり、歴史を通して一意に定式化できないため、現行品についての記述となっています。

多様化するIPA

現在、IPAには様々な亜種が存在します。以下に、代表的なものを紹介します。

ブラックIPA: 焙煎麦芽を使用し、濃い麦芽の風味とホップの苦味が特徴
ニューイングランドIPA (ヘイジーIPA): 濁りのある外観と、ジューシーなホップの風味が特徴
ホワイトIPA: アメリカンIPAとベルギースタイルのウィートビールの風味を組み合わせたもの
サワーIPA: 乳酸菌を使用して酸味を加えたIPA
ミルクシェイクIPA: バニラや乳糖を加え、ミルクシェイクのような甘い味わいを再現
コールドIPA: ラガー酵母を使用し、非常にドライでホップが効いたクリーンなビール

これらの亜種は、現在ではあまり見かけなくなったものもありますが、今後再び注目される可能性も秘めています。

IPAの度数

IPAには、セッション、ダブル、トリプルといった接頭辞が付くことがあります。これらはアルコール度数を表しており、一般的にスタンダードなものが5〜7.5%であるのに対し、セッションは3〜5%、ダブルは7.5〜10%、トリプルはそれ以上を指します。

また、フルーツやスパイスなどの副原料を加えたIPAも存在しますが、これらは独立したスタイルとして認識されていません。

IPAは、その多様な風味とスタイルで、多くのビールファンを魅了し続けています。

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