インド水塔

インド水塔：横浜の異国情緒を象徴する歴史的建造物

横浜市中区山下公園の一角に、ひっそりと佇む「インド水塔」。この建物は、単なるモニュメントではなく、横浜とインドの深い繋がり、そして歴史を物語る貴重な遺構です。

歴史的背景

19世紀、横浜開港とともにインドとの交流が始まりました。多くのインド商人が山下町に商館を構え、絹織物などの貿易で繁栄しました。しかし、1923年（大正12年）の関東大震災は、この地に甚大な被害をもたらし、多くのインド人の方々も犠牲となりました。震災後、横浜市民は被災したインド人の救済に尽力し、住居の提供などを行いました。1930年（昭和5年）に、震災の瓦礫処分場として埋め立てられた場所に山下公園が開園しました。

そして1939年（昭和14年）、在日インド人協会は、震災で亡くなった同胞の慰霊と、横浜市民への感謝の意を込め、このインド水塔を山下公園内に建立し、横浜市に寄贈しました。この水塔は、横浜とインドの絆を象徴するモニュメントとして、今もなお大切にされています。

建築様式

インド水塔の設計を手がけたのは、横浜市の第四代目建築課長であり、同潤会アパートの設計にも携わった鷲巣昌です。そのデザインは、イスラム教寺院であるモスクの中庭にあるハウズ（泉亭）を彷彿とさせる、非常に珍しいスタイルです。イスラム風、インド風、そして日本風のデザインが融合した、独特の建築様式が特徴的で、東京の築地本願寺を連想させるという意見もあります。この独特なデザインは、インドと横浜の文化が融合した象徴とも言えるでしょう。

近年の改修工事

長年の風雨にさらされ、老朽化が進んでいたインド水塔は、近年の台風で屋根の一部が破損するなど、劣化が深刻化していました。そこで、2022年秋から2023年3月にかけて、横浜市によって大規模な改修工事が行われました。この改修工事では、建物の修復だけでなく、四隅の植え込みにインド国旗を模した色の花を植えるという新しい試みも行われました。現在は、サフラン、白、緑の横三色の花が美しく咲き誇り、訪れる人の目を楽しませています。

アクセス

インド水塔は、山下公園の西端に近い場所にあります。

最寄りのバス停：大さん橋入口から徒歩2分
横浜高速鉄道みなとみらい線：日本大通り駅から徒歩8分

まとめ

インド水塔は、横浜とインドの歴史的な繋がりを物語るだけでなく、建築物としても非常に価値の高いものです。その独特なデザインと歴史的背景は、訪れる人に深い感動を与えます。山下公園を訪れる際は、ぜひこのインド水塔に足を運び、横浜の歴史と文化に触れてみてください。

参考資料

NPO法人横浜シティガイド協会編 「ハマの建物探検」 神奈川新聞社 2002年6月26日 p.62-63
吉田鋼市 久我万理子著「ヨコハマ建築・都市物語」丸善株式会社 1995年9月30日 pp.54-57
* 横浜市中央図書館発行 「郷土よこはま 132号」1998年12月20日 pp.30-32

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