同潤会

同潤会とは

同潤会（どうじゅんかい）は、1924年（大正13年）に関東大震災の復興を目的として内務省によって設立された財団法人です。震災の義捐金を基に、東京と横浜を中心に住宅供給事業を展開しました。特に、鉄筋コンクリート造の集合住宅「同潤会アパート」の建設で知られていますが、その他にも木造住宅の建設や住宅地の開発も行いました。

設立の背景

1923年（大正12年）の関東大震災は、東京・横浜の市街地に甚大な被害をもたらしました。特に下町では、木造住宅が密集していたため、火災による被害が拡大しました。この状況を受け、不燃構造の集合住宅の必要性が強く認識されるようになり、震災前から東京市や横浜市では鉄筋ブロック造の集合住宅の建設が始まっていましたが、計画的な供給が課題となっていました。

内務省は、国内外から寄せられた義捐金の中から1,000万円を拠出し、震災の翌年1924年（大正13年）5月に同潤会を設立しました。建築家らが評議員や理事に就任し、まず東京・横浜に木造バラックの仮設住宅を建設しました。その後、1925年（大正14年）8月からは、同潤会最初の鉄筋コンクリート造の集合住宅である中之郷アパートの建設を開始しました。中之郷アパートの設計は、東京大学建築学科の内田祥三研究室が担当し、1926年（大正15年）8月に竣工しました。以降、同潤会の設計部が中心となって、東京・横浜に次々と同潤会アパートを建設しました。

事業内容

同潤会は、都市の中間層向けの良質な住宅供給を主な目的とし、それに加えてスラム対策としての住宅建設（不良住宅改良事業）も行いました。鉄筋コンクリート造の住宅は建設コストが高いため、家賃収入だけでは投資額を回収することが困難でした。そのため、アパートの建設は1934年（昭和9年）に竣工した江戸川アパートメントで終了し、その後は1928年頃から手掛けていた分譲住宅（多くは木造平屋建て）の供給に注力しました。

同潤会が建設した住宅は、一般に「同潤会アパート」として知られていますが、これは同潤会が行った事業の一環に過ぎません。同潤会は、他にも様々な目的別の住宅建設事業を手掛けていました。

組織

同潤会の組織は、以下の通りです。

会長：内務大臣（兼務）
副会長：内務省社会局長（兼務）
主な理事・評議員：佐野利器、内田祥三、池田宏、渡辺鉄蔵など

木造住宅・住宅地の建設

同潤会は、鉄筋コンクリート造の集合住宅だけでなく、木造住宅も多く建設しました。震災復興のための仮設住宅に続き、1925年以降は賃貸普通住宅を建設しました。さらに、模範的な一戸建て住宅を分譲することとし、1928年から1938年の10年間に、東京・神奈川の20か所で分譲地を開発し、計524戸の木造分譲住宅を供給しました。その後も木造分譲住宅の建設は続けられました。

同潤会が手がけた主な住宅地

同潤会が手がけた住宅地には、以下のようなものがあります。

仮設住宅：方南、平塚、中新井、碑衾、奥戸、砂町、塩崎町
普通住宅：赤羽、十条、西荻窪、荏原、大井、砂町、松江、尾久、新山下町、瀧頭、大岡、井土ケ谷、六浦
分譲住宅：赤羽第一（西が丘）、阿佐谷、赤羽第二、荻窪、洗足台第一、経堂、洗足台第二、駒沢、善福寺、雪が谷、衾町、堀切、江古田、松蔭、東小松川、桜台、赤羽第三、斉藤分、山手町、川崎第一
職工向分譲住宅：三好町、白河町、千住緑町、越中島第一、越中島第二、板橋、調布千鳥町第一、調布千鳥町第二、川崎第二、鶴見、川崎第三、鶴見末吉、川口、川崎塚越、板橋第二
（同潤会解散時に建設中）：鶴見末吉第二、調布千鳥町第三、浦和、元住吉、三鷹、お花茶屋

受託事業

同潤会は、住宅建設だけでなく、神奈川県、名古屋市、大阪市からの受託事業も行っていました。また、住友本社、川崎航空機、千代田機械、日本製鉄、安川電機、住友金属、三井造船などの企業からの依頼で、住宅建設も行いました。

解散とその後

1941年（昭和16年）に住宅営団が発足したことに伴い、同潤会は業務を移管して解散しました。第二次世界大戦後、建設省の所轄のもとに設立された日本住宅公団（現在の都市再生機構）と機能が類似していますが、組織・財政・人的構成などの直接の系譜関係はなく、所轄官庁も異なるため、同潤会は日本住宅公団の「前身」とは言えません。

住宅地のその後

同潤会が建設した住宅地は、場所によって当時の街区の面影を残していますが、木造住宅のほとんどは老朽化により姿を消しています。2000年代まで現役で使用されていた江古田分譲住宅の一棟が、創建時の状態に復元され、「旧同潤会江古田分譲住宅佐々木邸」として国の登録有形文化財に登録されています。また、荻窪分譲住宅の最後の一棟は2022年3月に取り壊されました。

中延普通住宅地は、戦災で一部を焼失し、木造密集地域となっていましたが、「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」により、2018年に建替えが完了しました。

参考文献

『同潤会十八年史』

関連項目

建築史
日本の住宅
洋館付き住宅

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