インパルス消火システム

インパルス消火システムの概要

インパルス消火システムは、ドイツで開発された個人が携帯できる消火装備です。このシステムは、主に「インパルス銃」と呼ばれる発射機と、バックパック型の水タンクおよび圧縮空気タンクから構成されています。外観は火炎放射器に似ていますが、その機能は消火に特化しています。さらに、移動の便が良いトロリータイプの水タンクや圧縮空気タンクも存在します。

消火の仕組み

このシステムは、高圧の空気を利用して水を塊状に発射することで、少量の水でも効率的な消火作業を実現しています。消火は気化熱の原理に基づいており、発射された水霧が燃焼している物体の熱を奪い、燃焼プロセスを停止させることで火を消します。また、高圧の空気による強い打撃力により、高速で飛散する水粒子は遮蔽物を超え、火元に届きやすくなっています。

消防での使用例

この消火システムは、その携行性のおかげで、日本の消防現場でも「可搬式消火器具」として活用されています。オートバイに搭載し、車両火災や林野火災の初期消火に使用されるほか、東京消防庁では特別な装備としてインパルスを集束させた屈折放水塔車が導入されています。この装備は高所火災の場合、下の階での水損被害を抑えるために運用されますが、完全な量産には至らず、2007年には廃止されてしまいました。

バックパック型は特に初期消火に効果的で、重いホースを持ち運ぶことなく迅速に現場へ駆けつけることができます。消火活動の開始後、延焼を防ぎながら、市場のホースによるさらなる放水に切り替えられるつなぎの役割も果たします。諸々の条件に応じては、数台のバックパックを使って小規模な火を消すことも可能ですが、消防では基本的に完全鎮火を確認するまで放水を続けるため、延焼の抑制が主目的です。

警察における運用

本来の目的は消火であるインパルス消火システムですが、日本の警察でも可搬式高圧放水器として利用されています。特に、強力な水の衝撃が暴動の鎮圧に適しているため、機動隊向けに配備されています。2002年のサッカーワールドカップの警備をきっかけに、多くの機動隊に導入されましたが、ステージ内や狭い場所ではまともに放水車では対応できないため、インパルスの採用が進められました。一部のインパルスには見やすい設計となるレーザー照準が搭載されています。

また、2003年の名古屋立てこもり放火事件を受けて、制圧や逮捕を行うために、刑事部の突入班にも導入されています。

軍事での活用

オーストリアの特殊部隊コブラがこのシステムを採用し、その後日本の警察特殊部隊にも普及しました。

民間利用

民間の市場では、インパルス消火システムは多く出回っておらず、主に少数の企業の自衛消防隊や警備会社が防災用として保有しています。特に、日本鯨類研究所により、調査捕鯨船が妨害に対抗するために利用されています。

脚注

インパルス消火システムはその携行性や機能性から、様々な場面での消火活動や緊急事態への対処に価値を提供しています。

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