インヴァネス伯爵

インヴァネス伯爵は、イギリスの伯爵位であり、その歴史は複雑に絡み合っています。この爵位は、スコットランド貴族として最初に創設されたものの、後にイギリス王室の成員に与えられる従属称号として複数回創設されています。

ジャコバイト貴族としての創設

最初にインヴァネス伯爵が創設されたのは1718年、ジェームズ・フランシス・エドワード・ステュアート（自称「ジェームズ3世および8世」）によってでした。彼は第7代キノール伯爵トマス・ヘイの三男ジョン・ヘイ・オヴ・クロムリックスに、スコットランド貴族としてこの爵位を与えました。しかし、ジェームズの即位はイギリスでは認められていなかったため、この爵位もまた正当なものとはみなされませんでした。名誉革命後にジェームズ2世および7世やその継承者によって創設されたこのような爵位は、「ジャコバイト貴族」と呼ばれています。

ジョン・ヘイは1727年にインヴァネス公爵に陞叙されましたが、1740年に後継ぎがないまま亡くなったため、これらのジャコバイト貴族の爵位は断絶しました。

連合王国貴族としての創設

その後、インヴァネス伯爵は連合王国貴族として、イギリス王室の成員に対する従属称号として何度か創設されました。最初に創設されたのは1801年、ジョージ3世の六男オーガスタス・フレデリック王子がサセックス公爵に叙される際、インヴァネス伯爵とアークロー男爵も同時に授けられました。オーガスタス・フレデリックの二度の結婚は、いずれも王室結婚法に反するとされ、1843年に彼が亡くなった際、爵位を継承する嫡出子はいませんでした。彼の継室セシリアも、サセックス公爵夫人や王子妃の儀礼称号を名乗ることはできませんでした。ただし、セシリアは1840年にヴィクトリア女王から自身の権利としてインヴァネス公爵を授けられています。

二度目の創設は1892年、ウェールズ公アルバート・エドワード王子（後のエドワード7世）の次男ジョージ王子に対して、ヨーク公爵・キラニー男爵とともに与えられました。ジョージ王子は1910年にジョージ5世として即位したため、この爵位は王位に統合されました。

1920年には、ジョージ5世が自身の次男アルバート王子をヨーク公爵に叙する際、インヴァネス伯爵およびキラニー男爵も授けました。アルバート王子は1936年にジョージ6世として即位したため、この爵位も再び王位に統合されました。

1986年には、エリザベス2世が次男のアンドルー王子をヨーク公爵、インヴァネス伯爵、キリーリー男爵に叙しました。このように、インヴァネス伯爵は、王室の変遷とともにその役割を変えてきた複雑な歴史を持っています。

インヴァネス伯爵一覧

第1期 (1801年)
オーガスタス・フレデリック (サセックス公) （1773年 - 1843年）
1843年、断絶
第2期 (1892年)
ジョージ (ヨーク公) （1865年 - 1936年）
1910年、ジョージ5世として即位
第3期 (1920年)
アルバート (ヨーク公) （1895年 - 1952年）
1936年、ジョージ6世として即位
第4期 (1986年)
アンドルー (ヨーク公) (1960年 - )

関連項目

女性に対して創設されたイギリス爵位一覧

インヴァネス伯爵は、その創設から現代に至るまで、イギリスの歴史と深く結びついた爵位であり、その変遷はイギリス王室の歴史を映し出す鏡とも言えるでしょう。

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