イン・ユーテロ

ニルヴァーナの《イン・ユーテロ》について

『イン・ユーテロ』は、ニルヴァーナが1993年にリリースしたスタジオ・アルバムです。このアルバムのタイトルは「子宮内」という意味を持っています。バンドは、前作『ネヴァーマインド』の商業的成功を受け、アンダーグラウンドへの回帰をテーマにした楽曲を制作しました。プロデューサーには、スティーヴ・アルビニが起用され、楽曲の内容はカート・コバーンの内面的な側面に深く切り込んだものとなっています。

レコーディングには24000ドルの費用がかかり、たった1週間という短い期間で完了しました。アルビニは、プロデュース料として通常の印税を受け取ることを拒否し、自身の信条に基づいてプロデュースに従事しました。しかし、アルバムのリリース直前には、バンドがアルビニのミックスに再調整を施したり、表現の過激さからレコード会社との摩擦が生じたりしました。

特に「レイプ・ミー」という曲が問題視され、ウォルマートやKマートの取り扱いから外される一因となったため、このアルバムは「問題作」としての側面も持つことになります。アメリカでの量販店向けでは、「Rape Me」が「Waif Me」に書き換えられ、バックカバーのデザインも変更されて販売されました。また、収録曲「ペニーロイヤル・ティー」は、後に別のミックスに差し替えられるなど、様々な経緯がありました。

このアルバムには、特にカートの意向が色濃く反映されており、サウンドはより暗いトーンが強調され、ヘヴィな低音が特徴的です。カートは、プログレッシブ・ロック・バンドのキング・クリムゾンのアルバム『レッド』から影響を受けたと語っています。アルビニのサウンドデザインへの貢献も大いに評価されています。

リリース当初は、前作と同じ路線を期待するファンからの否定的な反応もありましたが、アルバムはリスナーの予期を裏切る内容で、セールス的には前作ほどの成功を収めることはありませんでした。それでも、アルビニはこのアルバムの制作を通じて名声をさらに高め、また結果としてニルヴァーナにとって最後のスタジオ・アルバムとなったのです。『ローリング・ストーン誌』の「オールタイム・ベストアルバム500」リストにおいては173位にランクインしています。

収録曲

アルバムの収録曲は以下の通りです。特に記載がない限り、クレジットはカート・コバーンによるものです。

1. サーヴ・ザ・サーヴァンツ (Serve the Servants) - 3:34
2. セントレス・アプレンティス (Scentless Apprentice) - 3:47
3. ハート・シェイプト・ボックス (Heart-Shaped Box) - 4:39
4. レイプ・ミー (Rape Me) - 2:49
5. フランシス・ファーマー・ウィル・ハヴ・ハー・リヴェンジ・オン・シアトル (Frances Farmer Will Have Her Revenge on Seattle) - 4:07
6. ダム (Dumb) - 2:29
7. ヴェリー・エイプ (Very Ape) - 1:55
8. ミルク・イット (Milk It) - 3:52
9. ペニーロイヤル・ティー (Pennyroyal Tea) - 3:36
10. ラジオ・フレンドリー・ユニット・シフター (Radio Friendly Unit Shifter) - 4:49
11. トーレッツ (Tourette's) - 1:33
12. オール・アポロジーズ (All Apologies) - 3:50
13. ギャロンズ・オブ・ラビング・アルコール・フロー・スルー・ザ・ストリップ (Gallons of Rubbing Alcohol Flow Through the Strip) - 27:45（ボーナストラック、北米を除くインターナショナル盤のみ収録）

このアルバムの影響は現在でも続いており、他のアーティストによってカバーされることもあります。ジャズ・ミュージシャンのハービー・ハンコックは1996年のアルバム『ザ・ニュー・スタンダード』で「All Apologies」をカバーしました。『イン・ユーテロ』は、単なるアルバム以上のものであり、ニルヴァーナの音楽的な遺産を今なお感じさせる重要な作品です。

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