イヴァン・ニーベン

イヴァン・ニーベン

イヴァン・モートン・ニーベン（Ivan Morton Niven, 1915年10月25日 - 1999年5月9日）は、カナダ生まれのカナダ系アメリカ人数学者です。彼の主要な専門分野は数論であり、その生涯を通じてこの分野に多大な貢献をしました。

経歴

ニーベンは、カナダのブリティッシュコロンビア大学で学部課程を修了しました。その後、アメリカ合衆国に移り、1938年にシカゴ大学で博士号を取得しています。博士号取得後、彼は研究者としての道を歩み始めました。

1947年からは、オレゴン大学に籍を置き、教授として教鞭を執るとともに精力的な研究活動を行いました。このオレゴン大学での在職期間は長く、1981年に引退するまで続きました。長年の教育・研究への貢献を称えられ、彼は1981年にオレゴン大学からチャールズ・ジョンソン賞を贈られています。

主な業績

ニーベンの数学における業績の中でも特筆すべきものとして、以下の二点が挙げられます。

ウェアリングの問題に関する貢献

1944年、ニーベンはウェアリングの問題に関して画期的な成果を発表しました。この問題は、1770年にイギリスの数学者エドワード・ウェアリングによって提起されたものです。

問題の内容は、「2以上の全ての自然数 k に対して、任意の自然数が s 個の非負の k 乗数の和で表されるような整数 s が存在するか」という問いです。ダフィット・ヒルベルトが1909年に、このような整数 s の存在を証明していましたが、ニーベンはヒルベルトの仕事を発展させ、有限個の例外を除いて、ほとんど全ての k に対する s の値の上限を評価することに成功しました。これはウェアリングの問題の研究において非常に重要な一歩でした。

円周率の無理性の初等的証明

1947年、ニーベンは円周率（π）が無理数であることを示すエレガントな初等的証明を発表しました。円周率の無理性自体は古くから知られていましたが、ニーベンが示した証明は、微分積分学の基本的な知識のみを用いて理解できるほど簡潔でした。

その証明の簡潔さと美しさから、この証明はハンガリーの著名な数学者ポール・エルデシュが提唱した、数学的に最も美しい証明が集められているとされる仮想の書物「天書」(The BOOK) に載るべきだと称賛されたと伝えられています。

数学界での活動と栄誉

研究者としてだけでなく、ニーベンはアメリカ数学協会 (Mathematical Association of America, MAA) の運営にも深く関わりました。彼は1983年から1994年までの長きにわたり、同協会の会長を務め、アメリカの数学教育や研究の振興に貢献しました。その功績が認められ、1989年にはアメリカ数学協会から殊勲賞が贈られています。

ニーベンの数学における貢献は、彼の没後も称えられています。例えば、ある種の自然数がその各位の和で割り切れるとき、その数を「ハーシャッド数」と呼びますが、この数は彼の名にちなんで「ニーベン数」とも呼ばれることがあります。また、自然数の素因数分解の性質に関連する「ニーベン定数」も、彼の業績を記念して2000年に命名されました。さらに、1998年に発見された小惑星12513番にも、その名が冠されています。

イヴァン・ニーベンは、1999年5月9日、オレゴン州ユージーンでその生涯を閉じました。彼は数論の分野に重要な足跡を残し、その名を後世に伝えています。

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