イヴォルギンスキー・ダツァン

イヴォルギンスキー・ダツァン

イヴォルギンスキー・ダツァン（Иволгинский Дацан）は、ロシア連邦のブリヤート共和国に位置し、ウラン・ウデから約23km離れたヴェルフニャヤ・イヴォルガ村にあります。この寺院は1945年に建立され、宗教の自由が制限されていた当時、ソビエト連邦で唯一の仏教の中心地としての役割を果たしていました。ダツァンは、全ロシアのラマ僧の長であるパンディド・カンボ・ラマの住居があった場所としても知られています。

歴史的背景

イヴォルギンスキー・ダツァンは、仏教徒伝統僧伽の一部として、ソビエト時代に設立されました。このダツァンは、その後も信仰の中心として機能し続けました。1991年には、ダツァンの隣に仏教徒大学「ダシ・チョインホルリン」が設立され、仏教教育の場としても重要な役割を果たしています。教義や文化の普及に貢献するため、寺院内では様々な宗教行事や医療、教育活動が行われています。

ダツァンの文化的価値

イヴォルギンスキー・ダツァンには、タンカ（仏教の巻物絵画）、彫刻、儀式など、多岐にわたるブリヤートの芸術作品が集められ、保存されています。これらの宝物の中には、チベット語の経典が書かれた絹の巻物や、神聖なBodskhvaの温室が含まれています。ダツァンは、これらの文化的財産を守るため、国の保護下に置かれています。寺院内には、ソグション・グンカン、ミンドルリン・スム、デヴァジン、サクフユサン・スムといった複数の寺院があり、図書館やホテル、仏教徒大学、記念碑の美術館なども併設されています。

イチゲロフの伝説

イヴォルギンスキー・ダツァンの歴史には、特に注目すべきエピソードがあります。1927年、12代目パンディト・ハンボ・ラマであるダシ＝ドルジョ・イチゲロフは、自身の遺体を30年後に掘り起こすよう、弟子や友人に指示したと伝えられています。しかし、当時は信仰の自由が制約されていたため、この儀式は秘密裏に行われました。イチゲロフ師が亡くなった後、30年が経過した1970年、彼の遺体が掘り起こされると、驚くべきことに腐敗が全く見られなかったとして話題となりました。この現象は科学者たちによっても確認され、イチゲロフの遺体は特に防腐処理が施されていないにもかかわらず、素晴らしい保存状態が保たれていたのです。

この出来事は長い間封じ込められ、ソビエト連邦の崩壊後の2002年に再度掘り起こされ、専門家によって詳細に調査されました。遺体は腐敗の兆候が全くなく、信者にとっては奇跡的な存在として崇められました。

まとめ

イヴォルギンスキー・ダツァンは、歴史だけでなく、文化や教育、信仰の面でも重要な役割を担っている寺院です。ブリヤート共和国の仏教徒にとって、このダツァンは単なる宗教的な施設ではなく、文化の保護と伝承の最前線となっています。現代においても、訪れる人々に深い感慨を与える場所であり続けることでしょう。

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