イヴォン・ネプチーヌ

イヴォン・ネプチーヌ：ハイチの元首相、激動の時代を生きた政治家

イヴォン・ネプチーヌ（Yvon Neptune）は、1946年11月8日にハイチのカヴァイヨンで生まれました。彼は、2002年から2004年までハイチの首相を務めた人物です。ジャン＝ベルトラン・アリスティド大統領によって首相に任命され、2002年3月15日に就任しました。

しかし、彼の首相としてのキャリアは、ハイチの政治的混乱の中で終焉を迎えます。2004年3月2日、アリスティド大統領がハイチを国外へ去った直後、ネプチーヌは暴徒によって襲撃されます。暴徒は腐敗を理由にネプチーヌを攻撃しましたが、この試みは失敗に終わりました。ネプチーヌは後に、この暴徒がギ・フィリップによって組織されたものであると証言しています。

ネプチーヌは、ボニファス・アレクサンドルの暫定大統領就任が議会の承認を経ていないと抗議し、アリスティド大統領が国外退去を強要されたという主張を支持しました。その翌週、彼の官邸を警備していた米海兵隊員が、銃を持った2人を殺害するという事件も発生しています。そして、3月12日、ネプチーヌは、その3日前に任命されたばかりの選挙を経ないジェラール・ラトルチュの暫定政府によって、首相の座を追われることになります。

2004年3月27日、ネプチーヌは、他のアリスティド政権の高官36名とともに、暫定政権によって出国を禁止されます。表向きの理由は「腐敗の調査」のためでした。同年6月27日、ネプチーヌは令状が発給されたことを知り、ハイチ警察に出頭しますが、罪状がないまま拘束されることになります。ハイチ憲法では、裁判前の逮捕後48時間以内に事情聴取を受ける権利が定められていますが、ネプチーヌはそのような取り調べを受けることはありませんでした。

2005年2月19日、ネプチーヌは国連ハイチ安定化派遣団の保護拘禁下に置かれますが、その後、ハイチ当局の脱獄事件が発生したポルトープランスの刑務所に自ら身柄を戻します。同年4月18日、ネプチーヌは海外での入院と治療を目的とした国外退去の提案を拒否し、ハンガーストライキを開始します。2005年5月4日、国連ハイチ安定化派遣団の人権担当官であるティエリ・ファガールは、ネプチーヌの拘束を違法であると述べました。同日、彼は「死が近い」と報じられるほど、健康状態が悪化していました。2005年6月23日、国連のハイチ特使であるホアン・ガブリエル・バルデスは、ハイチ政府によるイヴォン・ネプチーヌの取り扱いを批判し、彼の解放を求めました。

ネプチーヌは、「嫌疑」をかけられたまま裁判を受けることなく2年間収監され、2006年7月28日に「健康および人道上の理由で」解放されました。しかし、アリスティド政権の関係者の多くは、依然として裁判を受けずに投獄されたままとなっています。

イヴォン・ネプチーヌの経験は、ハイチの政治的混乱と、その中で人権が軽視される状況を浮き彫りにしています。彼の事例は、正当な手続きと法の支配の重要性を改めて認識させるものです。

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