ウァレリウス・マクシムス

ウァレリウス・マクシムス（紀元1世紀前半頃）は、帝政ローマ時代のラテン語著述家であり、『著名言行録』（Facta et Dicta Memorabilia）の著者として知られています。この著作は、古代ギリシア・ローマの様々な逸話を集成したもので、後世に大きな影響を与えました。

生涯

ウァレリウス・マクシムスの生涯については、詳しいことは分かっていません。『著名言行録』が皇帝ティベリウスに献呈されていること、また、同書の内容から、彼がティベリウスの治世末期、具体的には31年から37年の間に本書を公刊したと考えられています。これは、セイヤヌス失脚後の状況を反映した記述が含まれていることからも推測できます。

『著名言行録』について

『著名言行録』は、全9巻（または10巻）から構成されています。この著作の特徴は、古代ギリシア・ローマの逸話を、勇気、慈愛、節度といった美徳から、残忍、悪行といった負の側面まで、様々な主題別に分類・収集している点にあります。これらの逸話は、修辞学者や弁論家が議論の際に用いる範例集として活用されることを意図して書かれました。

ウァレリウス・マクシムスの文体は、ラテン文学における白銀期への過渡期を示す、修辞的な特徴を持っています。彼は、リウィウスやキケロといった先行する著述家の作品を原資料として参照していましたが、その中には、彼自身の著作でのみ伝えられている貴重な逸話も含まれています。

中世のラテン世界においては、『著名言行録』は、プリスキアヌスの『文法学教程』などと並んで広く受容され、多くの写本が作成されました。カロリング・ルネサンス期には、フェリエールのルプスによって校訂された写本が現存しています。中世においては、本書は単なる範例集としてだけでなく、古代史の歴史書としても読まれていました。

関連書籍

* 吉田俊一郎『ワレリウス・マクシムス『著名言行録』の修辞学的側面の研究』東海大学出版部、2017年。ISBN 978-4486021308。

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