ウィズアウト・ユー (バッドフィンガーの曲)

ウィズアウト・ユー（Without You）

「ウィズアウト・ユー」は、バッドフィンガーというイギリスのロックバンドのメンバー、ピート・ハムとトム・エヴァンズによって作られた楽曲です。この曲は、1980年代以降、180以上のアーティストにカバーされ、大ヒットを記録しました。特に、日本ではシングル「明日の風」のB面に収録され、知られるようになりました。

バッドフィンガーのオリジナル

この曲の制作は非常に興味深いものであり、バッドフィンガーのメンバーであるハムとエヴァンズは、それぞれ異なる楽曲を持っていました。ハムが初めに作った「If It's Love」は、コーラスが物足りないものであり、同時期にエヴァンズが書いた曲もヴァースが弱いという課題を抱えていました。そこで二人は互いの曲を融合させ、1970年にアルバム『ノー・ダイス』に収録されることになりました。

はじめはシングルリリースこそなかったものの、この曲はリスナーの心を捉えることに成功しました。一方で、後年、バッドフィンガーのメンバー二人はそれぞれ自らの命を絶ってしまいます。この事実は、彼らの楽曲が持つ深い感情とともに語られることが多く、特にトム・エヴァンズの自死は印税 disputeが原因であったとされています。

ニルソンによるカバー

バッドフィンガーの楽曲は、その後ニルソンによってカバーされました。彼は当初この曲をビートルズのものだと誤解していましたが、気づいた後、1971年のアルバム『ニルソン・シュミルソン』に収録するためにアレンジを加えます。ニルソンのバージョンはイギリスのシングルチャートで1位を記録し、アメリカでも4週連続1位に輝くなど、広く評価されました。ニルソンのプロデューサーは、この曲が従来のバラードとは異なる「重いバックビート」が特徴的であると述べています。

また、ニルソンはこの曲を滅多にライブパフォーマンスで披露しなかったものの、1992年にはラスベガスでの公演にて演奏しました。彼の友人ジミー・ウェッブは、ニルソンのボーカルを称賛し、この曲が彼の世代の最高のパフォーマンスであると評しました。

マライア・キャリーのバージョン

マライア・キャリーは1994年にアルバム『ミュージック・ボックス』から「ウィズアウト・ユー」をシングルとしてリリースしました。この曲は、ニルソンが亡くなった直後に発表され、彼の追悼として位置づけられることが多いです。マライア自身は、この曲をリストランで聴いた際にカバーを決めたと語っています。彼女のアレンジは、ゴスペル風のバックコーラスや低い声域の使用が特徴で、特に「アメリカン・アイドル」のようなタレント番組で好評を博しました。

彼女のバージョンも大ヒットし、全米シングルチャートで最高3位を記録しました。さらに、マライアはこの曲によってヨーロッパでも大成功を収め、自身の初の全英シングルチャート1位を達成しました。

その他のカバー

「ウィズアウト・ユー」は多くのアーティストによってカバーされており、フォーリーブスや西城秀樹、ハート、メリサ・マンチェスターなど、多様なアーティストがこの曲を取り上げています。日本でのカバーも多く、弘田三枝子や鈴木トオル、小柳ゆきなど様々なスタイルでアプローチされています。

結論

「ウィズアウト・ユー」は、感情的な歌詞とその背景を映し出すその旋律によって、多くの人々の心を魅了し続けています。その影響力は時代を超え、現在でも新しいアーティストたちによって受け継がれています。この曲は、愛の喪失や希望、苦悩といった普遍的なテーマを持ち、多くの人々にとって特別な意味を持つ作品であり続けるでしょう。

もう一度検索