ウィズ・ザ・ビートルズ

ビートルズ『ウィズ・ザ・ビートルズ』：時代を彩った名盤

1963年11月22日、イギリスでビートルズの2作目のアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』が発売されました。前作『プリーズ・プリーズ・ミー』を凌ぐ勢いで全英アルバムチャートの首位を獲得し、その人気を不動のものとしました。本作は、モノラル盤とステレオ盤が同時発売された点でも注目に値します。

音楽性：R&Bと自作曲の融合

『ウィズ・ザ・ビートルズ』の魅力は、その音楽性にあります。収録曲の多くは、モータウンやR&Bをルーツとする楽曲で構成されており、ビートルズの音楽的多様性を示す重要な作品となっています。特に、ジョージ・ハリスンが初めて作詞作曲を手掛けた「ドント・バザー・ミー」は、彼の才能を開花させた重要な楽曲として知られています。また、本作には先行シングルは収録されておらず、アルバム用に書き下ろされた楽曲が中心となっています。これは、アルバムを一つの作品として完成させるという、ビートルズのこだわりを示すものです。

制作：多忙な日々の中でのレコーディング

アルバムのレコーディングは、1963年7月18日から10月23日までの3ヶ月間にわたって、7回のセッションで実施されました。この期間中、ビートルズはラジオやテレビへの出演、数々の取材、そして精力的なコンサート活動と、多忙を極めていました。しかし、そのような状況の中でも、彼らはアルバムに収録する楽曲一つ一つに細心の注意を払い、高品質な作品を作り上げたのです。レコーディングには、4トラック・レコーダーが初めて使用されたセッションも含まれています。これは、当時のレコーディング技術において画期的な出来事でした。また、アルバムに収録されている「抱きしめたい」と「ジス・ボーイ」は、11月29日にシングルとして発売されています。

アルバムジャケット：アート性の高いデザイン

『ウィズ・ザ・ビートルズ』のアルバムジャケットは、前作とは大きく異なるデザインとなっています。前作がカラー写真によるアイドル風だったのに対し、本作では白黒写真が採用されました。片側から光を当て、もう半分を影にするという、当時としては斬新な「ハーフ・シャドウ」と呼ばれる手法が用いられています。このジャケット写真は、写真家のロバート・フリーマンによって撮影されました。ブライアン・エプスタインは、フリーマンの撮影したジョン・コルトレーンの白黒写真に感銘を受け、彼に撮影を依頼したと言われています。メンバーは、ハンブルク時代に知り合ったアストリッド・キルヒャーが撮影した写真を参考に、同様の雰囲気の写真をフリーマンに依頼したそうです。このジャケットデザインは、レコードジャケットがアート作品として注目されるきっかけとなり、多くのアーティストに影響を与えました。ヴァン・ヘイレンのアルバム『OU812』のジャケットも、この手法を模倣したものです。ただし、オーストラリアで発売された本作のジャケットは、イギリス盤とは全く異なるデザインになっており、メンバーはこれに満足していなかったという逸話も残されています。

発売と評価

『ウィズ・ザ・ビートルズ』は、1987年にCD化されましたが、アメリカ合衆国では1987年のCD発売まで発表されませんでした。日本では、来日記念盤として『ステレオ! これがビートルズ Vol.2』というタイトルで、曲順を編集したものが発売されました。イギリス盤に準拠したものは1976年に発売されています。アメリカ合衆国では、収録曲を分割して『ミート・ザ・ビートルズ』と『ザ・ビートルズ・セカンド・アルバム』として発表され、収録楽曲にも違いが見られます。現在でも高い評価を得ており、『ローリング・ストーン』誌の選ぶオールタイム・ベストアルバム500にも選出されています。また、2003年にはRobert Dimeryの音楽批評書『死ぬ前に聴くべき1001枚のアルバム』にも掲載されました。

参加メンバーとスタッフ

ビートルズ: ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター
外部ミュージシャン・スタッフ: ロバート・フリーマン（カバー写真）、ジョージ・マーティン（プロデューサー、ミキサー、編曲）、ノーマン・スミス（エンジニア、ミキサー）

『ウィズ・ザ・ビートルズ』は、ビートルズの音楽的才能と、時代の空気感を凝縮した、まさに歴史的名盤と言えるでしょう。革新的なジャケットデザインと、高い音楽性で、今もなお多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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