ウィツィロポチトリ

ウィツィロポチトリ：アステカ神話の太陽と戦の神

ウィツィロポチトリ（Huitzilopochtli）は、アステカ神話において非常に重要な太陽と軍の神、さらには狩猟の神として知られています。彼の名前は「蜂鳥（huitzilin）の左（opochtli）」を意味し、その象徴ともされる蜂鳥は、天界における彼の神聖さを強調する存在です。彼は女神コアトリクエの息子であり、月神コヨルシャウキの弟という家系を持ちます。

ウィツィロポチトリの誕生にまつわる伝説は非常にドラマチックです。彼の母であるコアトリクエは、コアテペック山で羽毛の珠を収集したことで彼を妊娠します。しかし、彼女の他の子供たちは、この妊娠に対して屈辱を感じ、逆に母を殺そうとするのです。ところが、完全に武装したウィツィロポチトリは山から誕生し、母を襲った兄弟たちに対して復讐を果たします。彼は「トルコ石の蛇」を用い、コヨルシャウキを八つ裂きにすることで、兄弟たちの大半を滅ぼしたのです。ここにおいてウィツィロポチトリの兄弟殺しは、彼の軍事的な力とアステカの版図拡大を象徴しています。

アステカの神話では、太陽はしばしば戦士の役割を担い、生贄を求める存在とされています。ウィツィロポチトリも同様に、彼が転生した蜂鳥として表象されることが多いです。武士としての彼は心臓を生け贄として神に捧げさせることで、人間社会における重要な儀式を形成しました。

彼の外見は戦士そのもので、蜂鳥を模した頭飾りや、左足には蜂鳥の羽が飾られ、盾と槍を携えています。ウィツィロポチトリは、テスカトリポカというもう一人の戦士の神と密接に関連づけられ、両者はしばしば同一の文脈で描かれることがあります。彼らは共にいくつかの象徴的なアイテムを持っているため、神話の中での関係性を深めています。たとえば、煙を発する鏡や、赤い革の紐で結ばれた白い輪の胸飾り、蛇や鏡に変えられた足などがその描写に含まれることが多いです。特に、ウィツィロポチトリは『マリアベッキアーノ絵文書』ではテスカトリポカの友として言及されており、アステカの神々の中で最も信仰されていました。

テノチティトラン（現在のメキシコシティ）がアステカの首都となったのは、ウィツィロポチトリの神託によるものであり、彼はメキシコの国旗や国章にもしっかりと描かれています。さらに、アステカの大神殿であるテンプロ・マヨールは、彼を祀るために設計された双子神殿で、トラロックと共に信仰の中心的存在とされました。

このようにウィツィロポチトリは、アステカ文化のアイデンティティを調整し、その信仰や戦争の象徴として重要な役割を果たしてきました。彼の姿勢と物語は、アステカ人の精神的な支柱であり、儀式や戦争の過程でも強い影響を持つ存在です。

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