ウィリアムス管

ウィリアムス管について

ウィリアムス管（Williams tube）は、初めてのランダムアクセス可能な記憶装置として、1940年代に開発されました。この装置は、フレディー・ウィリアムスとトム・キルバーンによって設計され、陰極線管（CRT）の技術を利用したコンピュータのメモリデバイスです。ウィリアムス管は、ブラウン管の一種とも見なされることがあります。初期のコンピュータで広く使われたこの技術は、特にマンチェスター大学での実験機関であるManchester Babyでの利用記録で知られています。

動作原理

ウィリアムス管は、陰極線管の特性に基づく二次電子放出の現象を利用して動作します。電子ビームがCRTの表面にある蛍光体に当たると、ビームのエネルギーが一定の閾値を超えることで電子が放出され、周囲のドットに電荷が蓄積します。この電荷の分布により、二次的なポテンシャル井戸が形成され、これがビット（0または1）を表す記憶の役割を果たします。

ウィリアムス管は、ドットの配列を用いて情報を表現し、それを取り出すプロセスは、書き込み操作によって引き起こされる電流の変化を解析することで実現されます。選択されたビット位置の電荷状態の異なる変化を読み取ることで、過去の状態（0または1）を識別する仕組みとなっています。

このメモリデバイスは、情報が時間の経過とともに消失するため、定期的なリフレッシュが必要で、メモリを維持するためには書き込みと読み出しのサイクルを継続的に実行する必要があります。このリフレッシュ動作は、現在のDRAMに似たサイクルとして知られています。

開発の背景

ウィリアムス管は、イギリスのマンチェスター大学で開発されました。1948年6月21日、マンチェスター・ベビーという実験機で初めてプログラムを実行した際に、このメモリ装置が使用されました。ただし、ウィリアムス管が直接的にこの機械のために設計されたわけではなく、機器の信頼性を証明する目的がありました。

ウィリアムスとキルバーンは、1946年から1949年にかけて特許を取得し、その後この技術は様々な初期コンピュータで採用されました。たとえば、マンチェスター・マークIやFerranti Mark Iなどのコンピュータにはウィリアムス管が実装されています。また、アメリカ初のコンピュータであるIBM 701やUNIVAC 1103、さらにはソ連や日本のコンピュータでも利用されていました。

終焉と後継技術

ウィリアムス管は、1950年代に入ってから磁気コアメモリの技術が登場するまでの間、主に使用されていました。水銀遅延線よりも性能やアクセス速度の点で優れていた一方で、使用するうちに信頼性が低下する傾向があり、手動での調整が必要であったため、その寿命は限られていました。

最終的には、安定した性能を提供できる新しい記憶装置が登場したことにより、ウィリアムス管の使用は減少しました。しかし、その技術的な革新は、現代のコンピュータメモリの発展において重要な足がかりとなりました。

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