ウィリアム・ウォレス (数学者)

ウィリアム・ウォレス (William Wallace)

スコットランドの数学者、天文学者、そして教育者であるウィリアム・ウォレスは、1768年9月23日にファイフのダイザートに生を受けました。父は皮革製造業者、母はジャネット・シムソンです。故郷ダイザートおよびカークカルディで幼少期と教育期間を過ごした後、1784年に家族とともにエディンバラへ移住しました。ここで彼は製本技術を習得する傍ら、並外れた熱意をもって独学で数学、代数学、天文学の知識を深めていきました。その才能は、当時エディンバラ大学のジョン・ロビンソンやジョン・プレイフェアといった高名な学者たちの目に留まり、彼らの支援を受ける幸運に恵まれました。

学術的な道に進むことを決意したウォレスは、研究により専念できる環境を求めていくつかの職を経験しました。1794年にはパースアカデミーの助講師となり、教育者としての第一歩を踏み出します。その後、1803年にはグレートマロウにあった王立陸軍大学で教鞭を執る職に就きました。大学がサンドハーストへ移転した後も、彼はその地位に留まり、教育と研究を続けました。この間、1804年には学術的功績が認められ、エディンバラ王立協会のフェローに選出されています。

1819年、ウィリアム・ウォレスはエディンバラ大学の数学科長という栄誉ある地位に就任しました。これは、彼を長年支援してきたジョン・プレイフェアの後任としての就任でした。以後約20年間にわたり、ウォレスは大学で熱心に数学を教え、その明快で丁寧な講義は多くの学生から高い評価を得ました。彼の教え子の中には、後に著名な科学者となるメアリー・サマヴィルの名前も見られます。

数学におけるウォレスの主要な研究分野は幾何学でした。1799年に彼が発表したある定理は、現在「シムソンの定理」として広く知られていますが、この名称は後世になって誤ってロバート・シムソンに帰せられたものであり、実際の発見者はウォレス自身です。また、1807年には等積な図形に関する重要な結果を証明しており、これは後に「ウォレス–ボヤイ–ゲルヴィンの定理」の一部として結実しました。しかし、彼のイギリス数学界に対する最も重要な貢献は、当時のヨーロッパ大陸、特にフランスで目覚ましい発展を遂げていた新しい解析学（微分積分学など）を、イギリスにいち早く紹介し、その普及に尽力した先駆者の一人であることです。ニュートン以来の古典的手法に留まる傾向があったイギリスの数学界に、大陸の進歩的な数学を導入する上で、ウォレスは極めて重要な役割を果たしました。

学術雑誌への寄稿も早くから行っており、レイボーンの『Mathematical Repository』などに論文を発表しました。また、デイヴィッド・ブリュースターが編集したブリタニカ百科事典第4版のために、「代数学」「円錐曲線」「三角法」といった多数の数学・物理学関連項目を執筆するなど、精力的な執筆活動も行いました。エディンバラ王立協会の紀要にも多くの重要な論文を発表しています。

数学以外では、ウォレスは天文学にも深い関心を持っていました。さらに、応用分野における貢献として、製図などに用いられる縮図器を発明したことでも知られています。

教育活動や論文発表に加え、自らの研究成果をまとめた著書も刊行しました。主要な著作としては、『円錐曲線に関する幾何学的論考』(1838年)や、『幾何学的定理と解析公式』(1839年)があります。

私生活では、ジャネット・カーと結婚し、子宝にも恵まれました。娘のマーガレット・ウォレスは、後に数学者トーマス・ギャロウェイと結婚しています。息子には、アレクサンダー、医師となったウィリアム、アーチボルトなどがいました。

1838年、健康上の理由からエディンバラ大学を退職しました。晩年はエディンバラ南部のローリストン・レーン6番地で静かに過ごしました。1843年4月28日、故郷エディンバラで74年の生涯を閉じました。彼の遺体はエディンバラのグレーフライヤーズ教会墓地に埋葬されています。墓所は、墓地の北側中央部にある北向きの擁壁上に見ることができます。

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