ウィリー・ウェルズ

ウィリー・ウェルズ（Willie Wells）

本名ウィリアム・ジェームズ・ウェルズ、1905年8月10日にテキサス州オースティンで生まれたウィリー・ウェルズは、主にニグロリーグで活躍した伝説的な遊撃手である。右投げ右打ちの彼は、「エル・ディアブロ」（悪魔）というニックネームで知られ、1920年代から1940年代にかけて、人種隔離政策下のニグロリーグでその才能を遺憾なく発揮した。1989年1月22日に故郷で83年の生涯を閉じた。

経歴

学生時代には野球とフットボールでその運動能力を示したウェルズは、1923年に地元のセミプロ球団で野球のキャリアをスタートさせた。翌1924年には、主要ニグロリーグの一つであるニグロ・ナショナル・リーグに加盟していたセントルイス・スターズに入団。1931年まで8シーズンにわたり、チームの中心選手として活躍した。

彼の最も輝かしい時期は、スターズが1928年、1930年、1931年と三度リーグチャンピオンに輝いた1920年代後半から1930年代初頭にかけてだった。特に、ウェルズはここ一番での勝負強さを発揮し、相手チームから恐れられる存在だった。1926年には、当時のニグロリーグにおけるシーズン最多記録となる27本塁打を放つ。さらに、1929年には打率.368、1930年には打率.404を記録し、2年連続でリーグの首位打者に輝くなど、打撃面で圧倒的な成績を残した。

この打撃での突出した活躍は、相手投手の警戒を招き、頻繁にビーンボール（頭部付近への投球）を投げられるようになった。危険を回避するため、ウェルズは建設現場で使用する保護ヘルメットを改造して着用するという、当時としては画期的な方法を取った。これは野球界全体において、打者がヘルメットを装着した最初の例の一つとも言われている。

1931年シーズン終了後、所属していたリーグが破綻し、スターズも消滅したため、ウェルズはその後、複数の球団を転々とする時期を迎える。1930年代後半にニューアーク・イーグルスに所属していた頃は、その攻撃力に加え、遊撃手としての卓越した守備力も高く評価され、相手チームにとって大きな脅威となった。

同時期、ウェルズはニグロリーグのオフシーズンを利用して、メキシコやキューバをはじめとするラテンアメリカ諸国のリーグでもプレーするようになった。特に1940年にメキシコリーグでプレーした際に、現地のファンが彼の守備範囲の広さと素早い動きから「エル・ディアブロ」（悪魔）というニックネームをつけたと言われている。キューバリーグには通算7シーズン参加し、その間二度もリーグ最優秀選手に選ばれるなど、ここでもその実力を証明した。

ニグロリーグでは1948年頃まで現役選手としてプレーを続けた。引退後も野球に携わり、1950年にはカナダ西部のリーグで選手兼任監督を務めた。1954年にはアメリカに戻り、ニグロリーグのバーミンガム・ブラックバロンズで監督を務めるなど、指導者としても活動した。

晩年と殿堂入り

1989年1月22日、生まれ故郷のテキサス州オースティンで83年の生涯を閉じた。存命中には「野球殿堂入りしていない最も偉大な選手」と評されることもあったが、彼の功績が正当に評価され、1997年、ベテランズ委員会によってアメリカ野球殿堂入りが決定した。

主な記録・表彰

ニグロリーグでの通算成績は、出場945試合で打率.328、126本塁打を記録している。キューバリーグでは通算打率.320を記録し、本塁打王に二度輝いたほか、最優秀選手に二度選出されている。また、メジャーリーグとの交流試合でも通算打率.410という驚異的な成績を残しており、当時のウェルズの実力がメジャーリーガーと比べても遜色なかったことを示している。

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