ウィルス・ポータシオ

ウィルス・ポータシオ（Whilce Portacio）は、1963年7月8日にフィリピンで生を受けた、フィリピン系アメリカ人の著名なコミック・ブック・アーティストです。

生い立ちとキャリアの始まり
ポータシオはフィリピンのカヴィテ市サングレイ岬で生まれましたが、2歳の時に一家と共にアメリカ合衆国へ移住しました。幼少期をミッドウェー島やニューメキシコ州で過ごした後、カリフォルニア州サンディエゴに定住しました。彼のコミックアーティストとしてのキャリアは、1985年にマーベル・コミックスでインカーとして始まった後、すぐにペンシラーとしても頭角を現しました。『パニッシャー』、『X-ファクター』、『アンキャニィ・X-メン』といった人気シリーズを手掛け、その名を知られるようになりました。

イメージ・コミックス設立と挑戦
1992年、当時のコミック界で大きな注目を集めていた他の6名のアーティスト（ジム・リー、ロブ・ライフェルド、ジム・ヴァレンティーノ、エリック・ラーセン、トッド・マクファーレン、マーク・シルヴェストリ）と共に、新興のコミック出版社イメージ・コミックスを共同で立ち上げました。これは、アーティスト主導の作品制作を目指す画期的な試みでした。しかし、彼は姉妹の病という個人的な事情により、設立間もないイメージ・コミックスを離れることとなります。その後、自身のオリジナルタイトルとなる『ウェットワークス』を創作し、1994年に共同設立者の一人であるジム・リー率いるワイルドストーム社から発表しました。他に代表的な仕事としては、『ストーン』や、マーベルの『ヒーローズ・リボーン』における論議を呼んだ『アイアンマン』シリーズの作画などがあります。

健康問題からの復帰
2000年8月、ポータシオは膵臓機能不全による糖尿病性昏睡という重篤な状態に陥りました。一週間後に意識を回復したものの、大幅な体重減少に見舞われ、描画はおろか、歩くことや立つことすら困難な状況でした。しかし、彼は驚異的な回復力を見せ、わずか半年後には再びペンを握れるまでになりました。彼自身の言葉によれば、心の中では描きたいイメージが見えていたものの、それを手で表現することができなかった時期があったといいます。2006年には、ワイルドストーム社で『ウェットワークス Vol.2』の作画担当としてアーティスト活動に本格的に復帰しましたが、度重なる制作遅延が発生し、安定した制作体制の維持が困難であるとの評価から、第6号でメインの作画からは退きました。しかし、その後もシリーズの表紙絵は最終号まで描き続けました。この新しい『ウェットワークス』シリーズは全15号と短命に終わりました。同時期にはDCコミックスの月刊シリーズ『バットマン・コンフィデンシャル』のアートも手掛けるなど、幅広い活動を続けていました。2008年6月には、『スポーン』の原作者トッド・マクファーレンとブライアン・オルギンと共に、同年10月から始まる同シリーズ第185号以降の作画担当アーティストとして正式に発表され、『スポーン』の世界に新たな息吹を吹き込みました。

作風とコミック界への貢献
ポータシオの作風は、初期にインカーとしてジム・リーの緻密なペンタッチを支えた経験に裏打ちされています。彼自身もジム・リーやロブ・ライフェルド、マーク・シルヴェストリといった同時代の著名な作家たちから影響を受けつつ、独自の繊細かつ力強い描線と表現スタイルを確立しました。特徴的でダイナミックなコマ割りや独特のキャラクター表現は、彼の作品を視覚的に魅力的なものにしています。マーベルの『X-メン』シリーズを担当していた際には、ミュータントのビショップやフィッツロイといった人気キャラクターを創造しました。また、今日でも多くのファンに愛されるキャラクター、ガンビットの象徴的な服装や髪型も彼がデザインを手掛けたものであり、キャラクターの確立と人気向上に大きく貢献しています。

主な著作
『X-ファクター』 Vol. 1 #68 (作画)
『ロングショット』 Vol. 1 #1-6 (インカー)
『ニュー・ミュータンツ』 Vol. 1 #43 (インカー)
『パニッシャー』 Vol. 2 #8-18 (作画)
『X-ファクター』 Vol. 1 #63-69 (作画・脚本補佐)
『アンキャニィ・X-メン』 Vol. 1 #281-286 (作画・脚本), 289-290 (作画)
『ザ・リージョン・オブ・ナイト』 #1 & 2 (作画)
『ウェットワークス』 Vol. 2 #1-6 (作画); #1-15 (カヴァー・アート)
『スポーン』 Vol. 1 #185- (作画)
『X-フォース』 Vol. 1 #102-109 (作画)

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