ウィルトン・フェルダー

ウィルトン・フェルダー

ウィルトン・フェルダー（Wilton Felder）は、1940年8月31日にテキサス州ヒューストンで生を受けたアメリカ合衆国の卓越した音楽家です。特にテナー・サックス奏者、そしてベーシストとしてその名を広く知られ、伝説的なジャズ・ファンク・グループであるザ・クルセイダーズの主要メンバーとして長年にわたり活躍しました。

音楽のルーツとザ・クルセイダーズ結成

フェルダーの音楽の旅は、故郷ヒューストンで始まりました。テキサス・サザン大学で音楽の専門的な教育を受け、その才能を磨きました。彼の音楽人生において決定的な出会いは、ヒューストンの高校時代に遡ります。そこで彼は、後にザ・クルセイダーズの核となるウェイン・ヘンダーソン（トロンボーン）、ジョー・サンプル（ピアノ）、スティックス・フーパー（ドラム）といった音楽仲間と巡り合いました。彼らは共にグループを結成し、当初はジャズ・クルセイダーズとして活動を開始しました。

このグループは、それまでの伝統的なジャズの枠を超え、ソウルやロックといった異ジャンルの要素を積極的に取り入れた先駆的なフュージョン・サウンドを確立しました。ウィルトン・フェルダーは、この革新的な音楽性を追求するグループにおいて、30年以上にわたり精力的に活動を展開し、そのサウンドの中核を担いました。

スタジオ・ミュージシャンとしての輝き

ザ・クルセイダーズでの活動と並行して、ウィルトン・フェルダーは多忙なスタジオ・ミュージシャンとしても引っ張りだこでした。彼の演奏はジャンルを問いませんでした。ジャズやフュージョン系のアーティストはもちろんのこと、ポップ、R&B、ロック、ブルースといった非常に幅広い分野の音楽家たちのレコーディングにその才能を提供しました。彼が参加した録音は膨大であり、その中にはマーヴィン・ゲイ、ジャクソン5、ビリー・ジョエル、ハリー・ニルソン、ポール・アンカ、B.B.キング、ティナ・ターナー、リンゴ・スターなど、音楽史に名を刻む数多くの巨匠たちの作品が含まれています。彼のサックスやベースの演奏は、これらの多様な楽曲に独特の彩りと深みを与えました。

リーダーとしての作品

グループや他のアーティストのサポートに加え、ウィルトン・フェルダーは自身のリーダー・アルバムも発表しています。彼の多面的な音楽性が反映されたこれらの作品も高く評価されています。

『Bullitt』 (1969年、Pacific Jazz)
『星の伝説 (We All Have a Star)』 (1978年、MCA)
『インヘリット・ザ・ウィンド (Inherit the Wind)』 (1978年、MCA)
『ジェントル・ファイア (Gentle Fire)』 (1983年、MCA)
『シークレッツ (Secrets)』 (1985年、MCA)
『ラヴ・イズ・ア・ラッシュ (Love Is a Rush)』 (1987年、MCA)
『ノクターナル・ムード (Nocturnal Moods)』 (1991年、PAR)
『フォーエヴァー・オールウェイズ (Forever, Always)』 (1992年、PAR)
* 『Lets Spend Some Time』 (2005年、BCS)

晩年と遺産

ウィルトン・フェルダーは、2015年9月27日にカリフォルニア州ウィッティアの自宅にて、多発性骨髄腫のためその生涯を閉じました。享年75歳でした。ザ・クルセイダーズとしての革新的な活動、そして数え切れないほどのレコーディングで示された彼の卓越した演奏技術と音楽性は、ジャズ、フュージョン、R&Bといった様々なジャンルにおいて、今なお多くの音楽ファンやミュージシャンに影響を与え続けています。彼の残した豊かな音楽的遺産は、これからも長く聴き継がれていくことでしょう。

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