ウィルヘルム・ティセリウス

ウィルヘルム・ティセリウス：生化学の進歩に貢献したスウェーデンの先駆者

ウィルヘルム・ティセリウス (1902年8月10日 - 1971年10月29日) は、20世紀を代表する生化学者の一人として知られています。スウェーデン王国のストックホルムに生まれ、幼くして父を亡くした彼は、家族と共にイェーテボリに移り住み、そこで教育を受けました。1921年にギムナジウムを卒業後、ウプサラ大学に進学し、化学を専攻します。

ウプサラ大学では、後にノーベル賞受賞者となるテオドール・スヴェドベリの指導の下、研究活動に携わりました。1925年からスヴェドベリの助手を務め、タンパク質の研究に没頭。その成果は、1930年にタンパク質の電気泳動法に関する研究で博士号を取得することに繋がります。この電気泳動法は、生体物質の分離・分析に革命的な手法をもたらし、後の生化学研究に大きな影響を与えました。

博士号取得後もティセリウスの研究活動は止まることはありませんでした。1935年頃までは、ゼオライトにおける主成分の吸着と脱離に関する研究に精力的に取り組み、複数の論文を発表。この研究は、プリンストン高等研究所でのロックフェラー財団研究奨励金獲得という栄誉にも繋がりました。

プリンストンでの研究活動を経て、ティセリウスはウプサラ大学に戻ります。物理化学的手法を駆使しながら、タンパク質の生化学的な問題に取り組み、電気泳動法のさらなる改良に尽力しました。彼の研究は、タンパク質の性質や機能の解明に大きく貢献し、生化学の進歩に重要な役割を果たしました。

第二次世界大戦後の1948年、長年の研究成果が認められ、電気泳動法の開発とタンパク質の研究への貢献によりノーベル化学賞を受賞します。この快挙は、スウェーデンのみならず、世界中の科学界に大きな衝撃を与えました。

ノーベル賞受賞後も、ティセリウスはスウェーデン化学界の発展に尽力し続けました。1951年から1955年にかけては、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の理事長を務め、国際的な化学界のリーダーとして活躍します。また、1957年には王立協会外国人会員に選出されるなど、数々の栄誉に輝きました。

1971年、ウプサラにて永眠。しかし、彼の残した功績は、生化学研究の発展に多大な影響を与え続け、現代の科学技術にまで繋がっています。彼の開発した電気泳動法は、現在でも広く利用されており、医薬品開発や環境分析など様々な分野で活用されています。ティセリウスの生涯と業績は、科学の進歩における個人の努力と貢献の大きさを示す、まさに輝ける一つの物語と言えるでしょう。

受賞歴

1948年：ノーベル化学賞
1953年：センテナリー賞
1955年：フランクリン・メダル、アウグスト・ヴィルヘルム・フォン・ホフマン・メダル
1961年：パウル・カラー・ゴールドメダル

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