ウィーン天文台

ウィーン大学天文台：天文学の歴史を刻むウィーンの天文台

ウィーン大学天文台は、オーストリアの首都ウィーンに位置する、歴史と伝統を誇る天文研究施設です。ウィーン大学構内、Turksの丘にその拠点を持ち、天文学研究の中心地として、長きに渡り輝かしい功績を残してきました。

設立から18世紀末まで：伝統の礎

ウィーン大学における天文学教育は、14世紀にまで遡ります。1391年から1882年にかけて、天体と地球に関する講義が行われており、15世紀にはグムンデンのヨハネスやゲオルグ・プールバッハ、レギオモンタヌスといった著名な天文学者たちが活躍しました。1733年にはイエズス会が観測所を設け、天体観測への取り組みが本格化しました。その後、マリア・テレジアの承認を得て、1756年、大学内に天文台が正式に設立されました。初代台長に就任したマクシミリアン・ヘルは、37巻に及ぶ膨大な天文学資料『Ephemerides astronomicae ad meridianum Vindobonensem』を出版するなど、ウィーン天文台を国際的に高い評価へと導きました。ヘルは金星の日面通過を観測し、太陽までの距離を計算するなど、数々の重要な業績を残しました。天文観測に加え、緯度の基準点の決定、正確な時刻の計測、気象観測なども行い、多岐に渡る研究活動が展開されました。しかし、ウィーンの中心部という地理的条件から観測環境は必ずしも良好とは言えず、1800年頃には新天文台の建設が提案されるも実現には至りませんでした。1825年には既存施設の改修が行われ、フラウンホーファー製の15cm望遠鏡が導入されました。

19世紀：新天文台の建設と発展

1842年には、カール・フォン・リトローが台長に就任。新天文台の建設計画を推進し、Turks hillの5.5ヘクタールの広大な土地に、1874年から1879年にかけて壮大な新天文台が建設されました。101mと74mの十字形状の建物は、中央に14mの観測ドーム、そして十字の各端に小さなドームを備えた特徴的な構造です。フォン・リトローは新天文台の完成を見ることなく1877年に亡くなりましたが、その功績はウィーン天文台の発展に大きく貢献しました。

エトムント・ヴァイスが台長に就任した1869年以降は、ヨハン・パリサが活躍しました。パリサは1881年から1923年にかけて122個の小惑星と70個の星雲を発見しました。これらの星雲の多くは後に銀河であることが確認され、天文学における大きな発見となりました。1890年から1892年にかけては、ルドルフ・スピテーラーがより大型の望遠鏡を用いた観測を行い、1922年には周期彗星113P/Spitalerを発見しました。その後、Kasimir Graff、Bruno Thüring、Josef Hopmann、Josef Meurersら多くの天文学者が台長を務め、ウィーン天文台は着実に発展を続けました。

20世紀以降：天体物理学への転換と新たな観測拠点

20世紀に入ると、天文学の主流は従来の望遠鏡による観測から天体物理学へと移行しました。ウィーンにおける光害の増加も課題となり、1969年には郊外にLeopold Figl観測所が設立されました。これは、ウィーン天文台が現代天文学に対応すべく、新たな観測環境を求めた結果と言えるでしょう。

ウィーン大学天文台は、設立以来、数々の著名な天文学者によって支えられ、時代とともに進化を遂げてきました。その歴史は、天文学の発展そのものを映す鏡であり、これからも天文学研究の中心として重要な役割を果たしていくことでしょう。

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