ウィーン条約 (1738年)

ウィーン条約（Treaty of Vienna）は、1738年11月18日にオーストリアのウィーンで締結された、ポーランド継承戦争の講和条約です。1733年から続いたこの戦争は、ヨーロッパの主要国を巻き込み、特にポーランド王位継承を巡ってフランス、ロシア、ハプスブルク家などが対立しました。この条約は、紛争を終結させると同時に、関係諸国の間で広範な領土の再配置を行う重要な内容を含んでいました。また、この条約は1739年のベオグラード条約とともに、国際的な取り決めがラテン語で記された最後の例の一つとしても歴史に名を残しています。

ポーランド王位の確定

条約の主要な点は、ポーランド王位継承問題の最終的な解決でした。フランスが支援していたスタニスワフ・レシチニスキは、ポーランド王位への請求権を正式に放棄しました。これにより、ロシアやハプスブルク家の支持を得ていたザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト2世（ポーランド王アウグスト3世）が、ポーランド王として広く認められることになりました。

スタニスワフへの補償とロレーヌ

王位を退いたスタニスワフ・レシチニスキには、補償としてロレーヌ公国とバル公国が与えられました。ただし、この措置には条件が付帯しており、スタニスワフの死後、これら二つの公国はフランス王国に併合されることが取り決められました。スタニスワフは1766年に亡くなり、その死後、ロレーヌとバルは約束通りフランスの一部となりました。この合意は、フランスが長年戦略的目標としていたロレーヌの獲得を、将来的にではあるものの平和的な形で実現する道を開いたものです。

ロレーヌ公フランツへの代償

ロレーヌ公であったフランツ・シュテファンは、その領地をスタニスワフに譲る代償として、イタリアのトスカーナ大公国を獲得しました。トスカーナでは、1737年にメディチ家最後の当主ジャン・ガストーネが死去しており、後継者が不在となっていました。フランツ・シュテファンがトスカーナ大公となったことで、ハプスブルク家はイタリア半島における新たな基盤を築きました。

イタリア半島の領土再編

ウィーン条約は、イタリア半島における勢力図にも大きな変更をもたらしました。ハプスブルク家は、ナポリ王国とシチーリア王国を、スペイン王フェリペ5世の息子であるパルマ公カルロに割譲しました。これにより、南イタリアにはスペイン・ブルボン家の支配が確立されました。その見返りとして、カルロは自身が統治していたパルマ公国をハプスブルク家に引き渡し、またトスカーナ大公位への請求権を放棄しました。これらの領土交換により、イタリア半島は南部のブルボン家、北東部（パルマ）と中部（トスカーナ）のハプスブルク家という、新たな勢力バランスの下に置かれることとなりました。

フランスによる国事詔書の承認

条約において、フランスはハプスブルク家の家領継承に関する1713年の国事詔書を正式に承認しました。これは、神聖ローマ皇帝カール6世が娘マリア・テレジアへの継承を確実にするために定めたものでしたが、フランスがこれを認めたことは、ロレーヌの将来的な獲得という自国の利益と引き換えに行われたものでした。

条約の意義と影響

ウィーン条約は、ポーランド継承戦争を終結させただけでなく、ヨーロッパの国際関係、特にイタリアと中央ヨーロッパの勢力均衡に重要な影響を与えました。各国の領土的な得失は、その後の外交関係や紛争の要因ともなりましたが、この時点での主要国間の合意は、一時的な安定をもたらす役割を果たしました。また、ラテン語による国際条約の時代を締めくくる歴史的な文書としても、その価値は大きいと言えます。

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