ウェザリング

ウェザリングとは、模型の塗装技法の一つで、英語の「weathering（風化）」が語源です。

模型を製作する際、塗装しただけの状態では、どうしても新品のように綺麗すぎて、実感が湧かないことがあります。そこで、実物が長年、風雨に晒されたことで生じる「汚れ」や「風化」などの状態を模型に再現する技法がウェザリングです。

特に、戦車や軍用機といったミリタリーモデル、鉄道模型で多用されますが、近年ではSFやアニメに登場する架空のメカにリアリティを与える技法としても用いられています。映画や映像の特撮分野でも古くから用いられており、『サンダーバード』のミニチュアモデルが良い例でしょう。また、『スター・ウォーズ』シリーズに登場する宇宙船も、汚れや損傷といったウェザリングが施され、作品の世界観を演出しています。

日本ではかつて「汚し塗装」という訳語が当てられていたため、「汚せばいい」という誤解を招くこともありました。しかし、ウェザリングの本来の目的は、風雨による影響（日光による退色や埃、雨だれの跡、錆、接触による傷や剥がれ、排気のスス、戦闘による損傷など）や経年劣化を再現することで、模型に実物のようなリアリティを与えることです。ウェザリングによって、その車両や機体がどんな場所で、どのような状態を経てきたかを表現することも可能です。そのため、ウェザリングを行う際は、実物がどのような環境で使用されていたかを研究、観察することが重要になります。

実物が存在しないSFのメカやロボットなどの場合は、それがどんな環境で使われるかを想像し、それに近い実在の機械を参考にすることが多いです。また、ウェザリングは塗装だけでなく、腐食や破損といった損傷状態を加工や工作によって表現することも含みます。東宝特撮の現場では、ウェザリングのことを「古色」と呼んでいたそうです。

ウェザリングの技法

ウェザリングの技法には多種多様な方法があります。ここでは、代表的な技法をいくつか紹介します。

観察に基づいた再現: 実物を観察し、その状態に似せて、絵を描くように模型上に汚れや風化を再現する方法です。軽い汚しにとどめることもあれば、実物以上に汚れを強調することもあります。
表面の加工: 塗装した表面を、部分的に磨いたり剥がしたりして、均一さを失わせ、よりリアルに見せる方法です。

具体的な手法

ドライブラシ: 乾いた筆を使って、エッジ部分や凸部に塗料を擦り付ける技法です。凹凸のハイライトを強調する効果があります。主に、毛先が短く硬い筆を使用します。エナメル系塗料が用いられますが、ラッカー系や水性アクリル系でも可能です。
ウォッシング: ドライブラシとは逆に、凹部に塗料を流し込み、凹凸のシャドーを強調する技法です。薄めた塗料を全体に塗り、表面を拭き取ることで、凹部のみに塗料が残ります。ラッカー系塗料で下地塗装をした後、エナメル系塗料で行うことが多いです。エナメル系溶剤はプラ素材を侵食する恐れがあるため注意が必要です。
パステル: 画材用のパステルを粉状にして、筆で塗り付ける技法です。ホコリ、土汚れ、錆、排気のススなどを表現できます。塗料と違い、乾燥したつや消し状態になることが利点です。定着材を使うこともあります。
エアブラシ: エアブラシを使って、塗料を薄く吹き付ける技法です。パステルと同様の効果を得たり、パネルラインに沿って明度を変えたりして、独特の風合いを出すことも可能です。特撮用プロップのヒルマ汚しと呼ばれる手法もエアブラシで行います。
フィルタリング: 様々な色を薄く塗り重ねて、周囲からの映り込みや色味を増やし、表情を持たせる技法です。エナメル系塗料や油絵具が使われることが多いですが、手軽なコピックを使うこともあります。
ペインティング: 絵画の手法で、雨だれ、錆、塗料の剥がれ、泥はね、ひび割れなどを模型に描き込む技法です。筆だけでなく、爪楊枝やスポンジなどを使うこともあります。手間はかかりますが、よりスケール感に合った表現ができます。

これらの技法を組み合わせることで、よりリアルで深みのあるウェザリングを表現することが可能です。模型製作においては、ウェザリングは非常に重要な要素であり、作品の完成度を大きく左右します。

関連事項

* エイジング: ウェザリングと同様に、模型や工芸品などを古びたように見せる加工技術全般を指します。

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