ウェストミンスター公爵

ウェストミンスター公爵：英国屈指の富豪貴族の歴史

ウェストミンスター公爵は、ロンドン中心部のウェストミンスター地区に名を由来する、連合王国貴族の公爵位です。1874年に第3代ウェストミンスター侯爵ヒュー・グローヴナーが叙爵されたことから始まりました。ロンドンのメイフェアを中心に広大な土地を所有し、英国貴族の中でも飛び抜けて裕福な一族として知られています。現在の当主は、第7代ウェストミンスター公爵のヒュー・グローヴナーです。

グローヴナー家の隆盛

グローヴナー家の歴史は、15世紀のラルフ・グローヴナーが婚姻によってチェシャーのカントリー・ハウス、イートン・ホールを手に入れたことから始まります。以来、グローヴナー家はイートン・ホールを本拠地とし、着実に土地を増やし、地域社会での地位を確立していきました。16世紀以降は、特に北ウェールズの鉱山からの収入が大きな利益をもたらしました。

リチャード・グローヴナー（1584-1645）は、チェシャー選出の庶民院議員であり、チェシャーとデンビーシャーのハイシェリフも務めました。彼は1622年にイングランド準男爵位を授与されましたが、イングランド内戦では王党派を支援したため、一時的に家計が困窮しました。しかし、1677年までには家計を立て直すことに成功しています。

3代準男爵サー・トマス・グローヴナー（1656-1700）は、1677年にメアリ・デイヴィスと結婚し、当時のロンドン郊外に広がる広大な土地を手に入れました。ロンドンの都市化が進むにつれて、この土地は高級住宅地として開発され、現在のメイフェアへと発展しました。その結果、ウェストミンスター公爵家は現在でもメイフェア一帯に1400軒以上の不動産を所有しています。グローヴナー・スクエア、ベルグレイヴ・スクエアなど、公爵家にちなんだ名前が数多く存在することも、その影響力の大きさを物語っています。

爵位の変遷

7代準男爵サー・リチャード・グローヴナー（1731-1802）は、ホイッグ党の庶民院議員を務めた後、1761年にグレートブリテン貴族のグローヴナー男爵に叙され、貴族院議員となりました。さらに1784年には、グローヴナー伯爵とベルグレイヴ子爵に叙せられました。

その息子である2代グローヴナー伯爵ロバート・グローヴナー（1767-1845）も、襲爵前に庶民院議員を務め、海軍省政務官やインド問題弁務官などの政府役職を歴任しました。1831年には、ウェストミンスター侯爵に叙せられています。

3代侯爵ヒュー・ルーパス・グローヴナー（1825-1899）は、自由党の庶民院議員を経て、1874年にウェストミンスター公爵に叙せられました。彼はまた、第二次グラッドストン内閣で主馬頭を務めました。

現代のウェストミンスター公爵家

現在の当主である7代ウェストミンスター公爵ヒュー・グローヴナーは、初代公爵の曽祖父にあたります。公爵家はロンドンに加え、イングランドやスコットランドにも広大な土地を所有し、アメリカやオーストラリアにも不動産を所有しています。これらの資産は、グローヴナー・グループによって管理されています。

ウェストミンスター公爵家は、第一次世界大戦直後には世界で3番目の富豪と言われていました。現在でも英国貴族の中ではトップの資産家であり、英国有数の富豪として知られています。2015年のサンデー・タイムズ・リッチ・リストによれば、公爵の総資産は約85億6,000万ポンドと推定されています。

一族の本邸はイートン・ホールにあり、紋章には「家柄ではなく美徳を（Virtus Non Stemma）」というモットーが刻まれています。

現当主の保有爵位

ヒュー・グローヴナーは、以下の爵位と準男爵位を保有しています。

第7代ウェストミンスター公爵
第9代ウェストミンスター侯爵
第10代グローヴナー伯爵
第10代ベルグレイヴ子爵
第10代グローヴナー男爵
第16代準男爵

歴代当主

歴代の当主は、準男爵から始まり、男爵、伯爵、侯爵を経て、公爵へと爵位を上げてきました。

爵位の継承

2019年現在、ウェストミンスター公爵位には法定推定相続人も推定相続人もいません。一方、侯爵以下の爵位については、第8代ウィルトン伯爵フランシス・グローヴナーが推定相続人となっています。

ウェストミンスター公爵家は、その莫大な資産と歴史を通じて、英国社会に大きな影響を与え続けています。

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