ウェスト＝イースタン・ディヴァン管弦楽団

ウェスト＝イースタン・ディヴァン管弦楽団は、1999年にダニエル・バレンボイムとエドワード・サイードによって設立された、他に類を見ないオーケストラです。楽団名は、ゲーテの『西東詩集』に由来し、その名の通り、中東の異なる背景を持つ音楽家たちが集い、音楽を通して対話と理解を深めることを目指しています。

設立の背景と理念

バレンボイムとサイードは、長年紛争が続く中東地域において、音楽が人々を結びつける力を持つと信じていました。彼らは、イスラエルとアラブ諸国出身の若手音楽家を集め、共に音楽を奏でることで、相互理解を促進し、平和への道を切り開くことを目指しました。

初期の活動

1999年、ゲーテ生誕250周年を記念して、ドイツのワイマールで第1回のワークショップが開催されました。ヨーヨー・マも参加し、ベートーヴェンの交響曲第7番などを演奏しました。午前中はリハーサル、夜はディスカッションという形式で、音楽だけでなく、政治や文化についても意見交換が行われました。バレンボイムとサイードの対談集『音楽と社会』には、当時の様子が詳しく記録されています。

その後の展開

サイードの死後も、バレンボイムの指導のもと、楽団は活動を続けています。毎年夏にはスペインのアンダルシアで合宿を行い、ワークショップと演奏会ツアーを実施しています。2005年には、パレスチナ自治区ラマラで演奏会を開催し、大きな感動を呼びました。また、高松宮殿下記念世界文化賞の若手芸術家奨励制度に選ばれるなど、その活動は国際的にも高く評価されています。

音楽と社会への貢献

ウェスト＝イースタン・ディヴァン管弦楽団は、単なる音楽団体ではありません。音楽を通して、紛争や偏見を乗り越え、共存の道を模索する、社会的な意義を持つプロジェクトです。彼らの演奏は、聴衆に感動を与えるだけでなく、平和への希望を抱かせます。

近年の活動

2018年のアメリカ公演では、トランプ政権の入国禁止令により公演が危ぶまれましたが、適用が免除され、無事開催されました。困難を乗り越えて音楽を届けようとする彼らの姿勢は、多くの人々に勇気を与えました。

レコーディング

ワーナー・クラシックスから、コンサートライブのCDやDVDが多数リリースされています。彼らの熱演を、ぜひお聴きください。

関連情報

バレンボイム・サイード・アカデミー：音楽を通じた教育と対話の場を提供
公式ウェブサイト、Facebook、Instagram、X（旧Twitter）、YouTubeチャンネルで最新情報を発信

ウェスト＝イースタン・ディヴァン管弦楽団は、音楽の力で世界を変えようとする、革新的なオーケストラです。彼らの活動は、私たちに希望と勇気を与えてくれます。

もう一度検索