ウェリントン公爵騎馬像 (グラスゴー)

グラスゴーのシンボル、ウェリントン公爵騎馬像

スコットランドのグラスゴー、現代美術館の前に鎮座するウェリントン公爵騎馬像は、街を代表するアート作品の一つです。初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーの勇姿を象ったこの像は、1844年にイタリアの彫刻家カルロ・マロケッティによって制作されました。

特筆すべきはそのユニークな姿です。ほぼ毎日、誰かしらによって頭にオレンジ色の三角コーンが被せられているのです。これはもはやグラスゴーの伝統とも言える光景で、地元住民のユーモアと反骨精神を象徴するものとして、広く愛されています。

ロンリープラネットのガイドブックで「世にも奇妙な10のモニュメント」の一つに選ばれたこともあるこの騎馬像は、単なる彫刻作品を超え、グラスゴーという街のアイデンティティを体現する存在となっています。

三角コーンの謎と、市民の抵抗

騎馬像に三角コーンを被せる行為は、1980年代初頭に始まったとされています。酔っ払いが悪ふざけで被せたのが始まりという説が有力ですが、正確な起源は謎に包まれています。

グラスゴー市議会は、コーンを被せる行為が像の損傷につながるとして、長年これを取り締まろうとしてきました。高所作業車を使ってコーンを撤去しても、すぐに誰かが新しいコーンを被せてしまうため、いたちごっこが続いていました。1980年代後半には、コーンが被っていない状態の方が珍しいほどでした。

2013年、市議会は騎馬像の台座を2倍の高さにするという大胆な計画を発表しました。これは、コーンを被せるのを物理的に阻止し、年間10,000ポンドにも及ぶ撤去費用を削減するための方策でした。

しかし、この計画は市民の猛反発を招きました。ミュージシャンのレイモンド・ハックランドと写真家のスティーヴン・アランが「キープ・ザ・コーン」（Keep The Cone）というFacebookキャンペーンを立ち上げると、24時間以内に72,000以上の「いいね！」が集まりました。キャンペーンでは、コーンは騎馬像と共に街の財産であり、台座のかさ上げは税金の無駄遣いだと主張されました。

市民の強い反対を受け、市議会はわずか1日で台座のかさ上げ計画を撤回しました。その夜、街では計画阻止を祝う市民が集まり、「来た、見た、コーンした（We Came, We Saw, We Cone-quered.）」と書かれた旗を掲げました。

コーンを巡る騒動と、その象徴性

その後も、グラスゴー市議会はコーン対策を諦めず、監視カメラシステムにコーンを被せようとする人間を自動で検知するソフトウェアを導入するなどの試みを行いました。しかし、市民のコーンへの愛着は揺るがず、今日に至るまで、騎馬像の頭には常にコーンが被せられています。

近年では、政治的なメッセージを込めたコーンも登場しています。2020年のイギリスEU離脱時にはEU旗を模したコーンが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻時にはウクライナ国旗柄のコーンとヒマワリの花束が飾られました。

ウェリントン公爵騎馬像と三角コーンは、グラスゴーのユーモア、反骨精神、そして市民の自由な精神を象徴する存在として、これからも愛され続けるでしょう。

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