ウェルシュ・フォックスハウンド

ウェルシュ・フォックスハウンド

ウェルシュ・フォックスハウンドは、イギリスのウェールズ地方原産のセントハウンド犬種です。その希少性から、目にすることも稀な犬種として知られています。

歴史

ウェルシュ・フォックスハウンドのルーツは、5世紀頃に存在したケルト系の古代セントハウンドに遡ります。より優れた犬種を目指し、改良が重ねられました。1820年代に本格的な作出が始まり、まずケルト系古代犬種とセント・ヒューバートが交配されました。その後、1826年にはジョン・ラッセル牧師から譲り受けたイングリッシュ・スタッグハウンドの雌犬が加えられ、1830年代頃に現在のウェルシュ・フォックスハウンドが完成しました。

主にキツネ狩りに用いられ、他のフォックスハウンド犬種とは異なり、単独で獲物を追い詰める能力を持っていました。ウェールズの厳しい気候の丘陵地帯に適応し、どんな天候でも狩猟をこなしたため、重宝されました。

しかし、もともと希少な犬種であったため、その数は限られています。現在では絶滅の危機に瀕しており、ウェールズでも見かけることは稀です。原産地以外ではほとんど知られておらず、FCI（国際畜犬連盟）などの公認も受けていません。

特徴

ウェルシュ・フォックスハウンドは、引き締まった体つきで、骨量は少なめです。そのため、身軽でありながら、セント・ヒューバートとイングリッシュ・スタッグハウンドの血を引いているため、高い狩猟能力を誇ります。外見はフランスのブリケ・グリフォン・バンデーンに似ていますが、血縁関係はありません。

脚は長く、大きな垂れ耳とふさふさした垂れ尾が特徴的です。コートはケルト系古代犬種から受け継いだラフコートで、非常に丈夫で硬く、雨、雪、霰、強風、茨、キツネの牙や爪、寒さ、冷水、豪雨、暴風など、あらゆる外的要因から身を守ります。その丈夫さから「ミスリルの毛皮」と称賛する愛好家もいるほどです。

毛色は、白またはミルク色をベースに、背中に黒、その他の部分にタンの斑が入ったトライカラーが一般的です。中型犬に分類され、性格は主人に忠実で従順、判断力も高いですが、独立心も強く、狩猟本能も旺盛です。活発で運動量も非常に多く、スタッグハウンド譲りの良く通る吠え声を持っています。この吠え声は猟犬としては不可欠な能力ですが、ペットとして飼育する場合は注意が必要です。

日本での飼育は難しい犬種ですが、もし飼育する場合は、無駄吠えのしつけと十分な運動が必要です。狩猟本能を満たすために、物を隠して探させたり、フリスビーで遊んであげるのも良いでしょう。独立心は強いものの、主人との信頼関係を築ければ、家族にも友好的に接します。

かかりやすい病気としては、高温多湿な環境での皮膚疾患、顔の毛が目に入ることによる眼疾患、過剰な運動による関節疾患などが挙げられます。

参考文献

『デズモンド・モリスの犬種事典』デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳 誠文堂新光社、2007年

関連項目

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