ウェールズ聖公会

ウェールズ聖公会（Church in Wales, Yr Eglwys yng Nghymru）は、イギリス・ウェールズに中心を置くアングリカン・コミュニオンに属するキリスト教の教会です。その歴史は古く、かつてはイングランド国教会と密接な関係にありました。しかし、20世紀初頭、ウェールズ独自の教会組織を求める機運が高まり、歴史的な転換期を迎えることになります。

1920年以前、ウェールズはイングランド国教会の一部であり、ウェールズの国教でした。当時、ウェールズはバンゴール、セント・アサフ、セント・デイヴィッズ、ランダフの4つの主教区に分割され、カンタベリー大主教の監督下に置かれていました。しかし、19世紀末から非国教会系の教派がウェールズに広がり始め、多くのウェールズ教会は非国教会的になっていきました。

こうした状況の中、デイヴィッド・ロイド＝ジョージなどの非国教徒の政治家の働きかけもあり、イングランド国教会からの分離独立を求める声が強まりました。そして、1920年、イギリス議会はウェールズ聖公会法を可決。これにより、ウェールズ聖公会はイングランド国教会から独立し、独自の教会組織として誕生しました。国教としての地位を失ったものの、ウェールズにおける重要な宗教組織としての地位を確立したのです。

現在、ウェールズ聖公会はイングランド国教会や政府から完全に独立しています。アングリカン・コミュニオン全体の霊的指導者であるカンタベリー大主教を尊重し、その指導性を認めていますが、カンタベリー大主教はウェールズ聖公会に対して公式な権限を持つことはありません。ウェールズ聖公会は、独自の運営体制と規範に基づいて運営されています。

ウェールズ聖公会は、独立後、モンマスとスウォンジー・アンド・ブレコンの2つの主教区を新たに設置し、主教区の数は6つになりました。各主教区の主教は、選挙によって選ばれます。主教の選挙には、自主教区の代表、他の主教区の代表、そして他のすべての主教が参加します。また、ウェールズ大主教は6人の主教の中から選出され、選出後はウェールズ大主教と以前の任地の主教を兼務します。

組織運営において特筆すべき点として、ウェールズ聖公会は現在、女性主教を按手（聖職叙任）していません。これは、アングリカン・コミュニオンの中でも保守的な立場をとっていることを示唆しており、今後の動向が注目されます。ウェールズ聖公会の歴史と組織運営は、宗教と政治、伝統と改革が複雑に絡み合った結果として理解する必要があります。その独立の経緯と現在の組織構造は、ウェールズの文化的、宗教的なアイデンティティを形成する上で重要な要素となっています。

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