ウォロフ語

ウォロフ語の概要

ウォロフ語は、セネガル、ガンビア、モーリタニアにまたがる地域で話されている言語です。セネガルでは人口の約40%が母語話者であり、他の民族グループにも広く話されているため、事実上の共通語となっています。都市部、特にダカールでは、フランス語、英語、アラビア語からの借用語を含む独自の変種が話されています。セネガルではフランス語とともに公用語としての地位を有しています。歴史的にはOuolofという表記もありましたが、現在ではWolofが一般的です。

分布と社会言語学的状況

ウォロフ語の分布はセネガルに集中しており、ダカール、サンルイ、カオラック周辺に多く話者が見られます。ガンビアでも約15%が第一言語話者であり、首都バンジュールでは半数以上に達するなど、人口比以上に社会的な影響力を持っています。モーリタニアでは南部沿岸地域に限定されます。

セネガル、ガンビア、モーリタニアで話されているウォロフ語には、表記法や借用語（フランス語、英語）に違いが見られますが、話し言葉は互いに理解可能です。セネガルでは20以上の民族言語が存在するにもかかわらず、ウォロフ語はフランス語以上に国民に浸透しており、国民の9割以上が理解・使用しています。この状況は「ウォロフ化 (wolofization)」と呼ばれています。

表記と発音

現在、ウォロフ語はラテン文字で表記されますが、統一された正書法はなく、ダカール応用言語学センター (CLAD) の提案が参考とされています。フランス語の影響を受けた表記法も広く使われており、表記には揺れが見られます。イスラム教徒の知識人層の間では、かつてアラビア文字を用いたウォロファル (wolofal) という表記法も存在していましたが、一般には用いられませんでした。

ウォロフ語の発音は地域差や個人差があり、例えば「魚」を意味する単語はjénとjënのように変化します。辞書においても、こうした発音の変異が明記される場合が多いです。

文法

母音と子音

ウォロフ語には9個の短母音と7個の長母音があります。短母音は前舌、中舌、後舌にそれぞれ3つずつ分布し、eとé、oとó、aとàの区別は口の開き具合で識別します。長母音はaa、ii、uu、ée、óo、ee、ooがあります。子音には単子音と重子音があり、単子音は語末では破裂音が弱まります。

時制とアスペクト

ウォロフ語は印欧語のような時制ではなく、アスペクト（動作様相）を重視した文法体系を持ちます。動詞の前後にアスペクトを表す語を付加します。例えば、動詞dem（行く）に「damay」を付けると進行形や習慣を表し、「dinaa」を付けると未来を表します。

人称代名詞とアスペクト機能語の変化

人称とアスペクトを表す機能語は、動詞の活用と共に変化します。

na活用: 出来事を結果相で示し、行為動詞では現在完了、状態動詞では状態を表します。
la活用: 話し手の時点ですでに完了した行為を表す完了形です。
* -y接尾辞: la活用に-yを付けると近い未来、進行現在、習慣的行為を表す場合があります。

ウォロフ語にはBe動詞がありませんが、肯定文ではlaを用いて代用できます。

否定文

否定文は、①人称とアスペクトを示す機能語のduma活用、②動詞への-ul接尾辞の付加の2種類があります。duma活用は名詞や動詞の否定に用いられ、未来否定を表す場合があります。-ul接尾辞は完了否定形を表し、人称によって変化します。

命令文

命令文は動詞に-al（単数）または-leen（複数）を付けます。語末がi、u、長母音の場合は-lとなります。否定命令文は動詞の前にbul（単数）またはbuleen（複数）を付けます。

接尾辞

動詞や名詞に接尾辞を付けることで、アスペクトや所有などを表します。

名詞クラス

ウォロフ語には10個の名詞クラス（単数8、複数2）があり、名詞の後に定冠詞が付きます。母音i/aは距離（近い/遠い）を表し、ダカール方言では子音の区別が曖昧になる傾向があります。

話し手と聞き手の距離

名詞クラスや場所を表す前置詞ci/caは話し手と聞き手との距離によって変化します。

日常会話表現

挨拶、自己紹介、場所、感謝、食べ物、買い物、別れなど、様々な状況で使える日常会話表現をいくつか紹介します。

数詞

ウォロフ語の数詞は五進法を基本としています。1から5までは独自の単語があり、それ以降は5を基準に表現します。(例:6は5+1、11は10+1)

参考文献

梶茂樹、ジャン＝レオポルド・ジュフ『ウォロフ語入門』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、1994年。

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