ウォン・カークイ

ウォン・カークイ（黄家駒、Koma Wong、1962年6月10日 - 1993年6月30日）は、香港を代表するロックバンドBEYONDの創設者であり、精神的支柱でした。彼の音楽に対する深い愛情と、常に新しいサウンドを追求する姿勢は、香港の音楽シーンに大きな足跡を残しました。

生い立ちと音楽との出会い

ウォン・カークイは、深水埗区の蘇屋邨で育ちました。幼少期から欧米の音楽に親しみ、デヴィッド・ボウイに憧れを抱きました。15歳の時に手に入れた中古のアコースティックギターを独学で習得し、音楽の世界に足を踏み入れます。その後、赤いフェンダー・ストラトキャスターのエレキギターを手に入れ、演奏技術を磨きました。

高等中学卒業後は、様々な職業を経験。事務所のアシスタントや整備士、テレビ局の舞台美術など様々な職を経験しました。その中で、後にBEYONDのドラマーとなる葉世榮と出会い、共に保険会社のセールスマンとして働いた時期もありました。

1983年、ウォン・カークイはバンドを結成し、"Guitar Magazine"のコンテストに"Beyond"の名前で参加。これが、伝説のバンドBEYONDの始まりとなりました。

BEYONDとしての成功と日本進出

BEYONDは、香港で瞬く間に人気を獲得し、数々のヒット曲をリリース。ウォン・カークイは、作詞・作曲を手がけるだけでなく、そのカリスマ性溢れる歌声で多くのファンを魅了しました。1991年には日本へ進出し、アミューズとマネジメント契約を結びました。

突然の悲劇

1993年6月24日、ウォン・カークイはフジテレビのバラエティ番組『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』の収録中に、セットから転落する事故に遭いました。彼は、香港でのトップスターとしての地位を捨ててまで、当時未成熟だった香港のロック音楽の発展のために日本に滞在していました。しかし、日本の音楽市場開拓を視野に入れていた所属レーベルの意向もあり、不本意ながらバラエティ番組に出演することになったのです。

事故当時、スタジオに組まれたセットは高さ約3メートルの高さに釣り上げられ、水浸しの状態でした。ウォン・カークイは足を滑らせ、内村光良と共に転落。頭を強打し、意識不明の重体で病院に搬送されました。しかし、懸命な治療も虚しく、6月30日に東京女子医科大学病院で息を引き取りました。31歳の誕生日を迎えるわずか20日前のことでした。

彼の突然の死は、香港社会に大きな衝撃を与え、多くの人々が悲しみに暮れました。葬儀には各界の要人2,000人が参列し、沿道には10,000人以上のファンが詰めかけました。

死後も生き続ける音楽

ウォン・カークイの死後も、BEYONDの音楽は多くの人々に愛され続けています。2008年には、四川大地震の被災者支援のために、彼が作曲した「海闊天空（遥かなる夢に～Far away～）」に新たな歌詞をつけた応援ソング「承諾」がレコーディングされました。また、彼の誕生日には、香港で追悼コンサートや記念展が開催され、多くのファンが集まりました。

ウォン・カークイは、その短い生涯の中で、香港の音楽シーンに多大な影響を与えました。彼の音楽は、国境を越えて多くの人々に感動を与え、これからも永遠に愛され続けるでしょう。

代表的な楽曲

海闊天空
情人
光輝歲月
大地
遥かなる夢に～Far away～

出演作品

籠民
* Beyond日記之莫欺少年窮

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