ウォーターフォール・モデル

ウォーターフォールモデルとは

ウォーターフォールモデルは、ソフトウェア開発における最も初期に登場した開発モデルの一つです。開発プロセスを、まるで滝が流れ落ちるように、要求定義から始まり、設計、実装、テスト、運用へと、一方向に順に進めていく点が特徴です。

このモデルは、製造業や建設業など、物理的な制約が多い分野で発達した考え方をソフトウェア開発に応用したものです。初期段階で詳細な計画を立て、それに従って開発を進めることで、手戻りを最小限に抑え、効率的な開発を目指します。

ウォーターフォールモデルの工程

ウォーターフォールモデルでは、一般的に以下の工程を経て開発が進められます。

1. 要求定義: 開発するシステムに必要な機能や性能を明確にする。
2. 外部設計: システムの概要を設計する。
3. 内部設計: システムの内部構造を詳細に設計する。
4. 開発: 設計に基づいてプログラムを作成する。
5. テスト: プログラムが仕様通りに動作するかを検証する。
6. 運用: システムを実際に利用可能な状態にする。

これらの工程は、原則として前の工程が完了してから次の工程に進むため、各工程の成果物の品質を確保しやすいという利点があります。また、進捗状況を管理しやすい点も特徴です。

ウォーターフォールモデルの歴史

ウォーターフォールモデルの原型は、1968年のNATO後援の国際会議で提唱されました。当時、ソフトウェア開発は職人的な作業と見なされていましたが、製品製造のように工程を分割し、文書化することで進捗管理を可能にするというアイデアが生まれました。

「ウォーターフォールモデル」という用語は、1970年にW.W.ロイスが発表した論文で、大規模ソフトウェア開発におけるトップダウンアプローチを説明する際に用いられました。しかし、ロイスの論文では、実際には工程間のフィードバックや後戻りも考慮されており、現在一般的に認識されているウォーターフォールモデルとは若干異なっています。

ウォーターフォールモデルの問題点

ウォーターフォールモデルは、その厳格なプロセスが故に、以下のような問題点が指摘されています。

柔軟性の欠如: 開発の初期段階で全ての要求を確定する必要があるため、途中で仕様変更が難しく、変更が発生した場合、大幅な手戻りが発生しやすい。
前工程の誤りのリスク: 前工程に誤りがあると、後続の工程にも影響が及び、開発全体が遅延する可能性がある。
ユーザーのニーズとの乖離: 開発の初期段階でユーザーの要求を詳細に把握することが難しく、完成したシステムがユーザーのニーズと合わない場合がある。

特に、ソフトウェア開発の現場では、要件が明確でないことや、開発中に仕様変更が発生することが多く、ウォーターフォールモデルの硬直的なプロセスが課題となることが指摘されています。

ウォーターフォールモデルの現代的な適用

ウォーターフォールモデルは、その問題点から、現代のソフトウェア開発では、アジャイル開発などの柔軟性の高い開発手法が主流となりつつあります。しかし、大規模な開発プロジェクトや、仕様変更のリスクが低いシステム開発など、特定の条件下では、ウォーターフォールモデルが有効な場合もあります。また、現代では、ウォーターフォールモデルと他の開発モデルを組み合わせて使用されることも多く、状況に応じて最適な開発手法を選択することが重要です。

まとめ

ウォーターフォールモデルは、ソフトウェア開発における古典的な手法であり、その進捗管理の容易さから初期のソフトウェア開発に広く採用されました。しかし、柔軟性の欠如や前工程の誤りのリスクなど、現代のソフトウェア開発においては課題も多いことが指摘されています。そのため、現代の開発では、アジャイル開発など、柔軟性の高い開発手法が主流となっていますが、ウォーターフォールモデルも特定の条件下では有効であり、他の開発手法と組み合わせて使用されることもあります。開発プロジェクトの特性に応じて、最適な開発手法を選択することが重要です。

参考資料

菅野孝男『改訂ソフトウェア開発のマネージメント』新紀元社、1996年
Frederick P. Brooks Jr. 著、松田晃一・小沼千絵訳『デザインのためのデザイン』ピアソン桐原、2010年
McBreen,P. 著、村上雅章訳『ソフトウェア職人気質：人を育て，システム開発を成功へと導くための重要キーワード』ピアソン・エデュケーション、2002年
Larman,C. 著、高慎治郎・松田直樹・越智典子訳『初めてのアジャイル開発』日経BP社、2004年

関連項目

Vモデル
SSADM
スパイラルモデル
プロトタイプモデル
アジャイルソフトウェア開発
テスト駆動開発
ソフトウェア開発工程
* ステージゲート法

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