ウォーマッド

ウォーマッド（WOMAD）

ウォーマッド（WOMAD）は、「World of Music, Arts and Dance」の頭文字をとった名称であり、世界各地の音楽、芸術、舞踊に焦点を当てた国際的なフェスティバルです。1982年の創設以来、世界各地で開催され、多様な文化の紹介と交流の場を提供しています。

創設と初期の展開

このフェスティバルは、イギリスの著名なミュージシャンであるピーター・ガブリエルを中心に企画されました。第1回は1982年7月、イギリスのサマセット州シェプトン・マレットにて開催されています。この inaugural event には、世界22カ国から300名に及ぶ演奏家が集結し、多彩なパフォーマンスが披露されました。

しかし、第1回は興行面では苦戦し、25万ポンドの赤字を計上しました。この財政的な困難を乗り越えるため、ピーター・ガブリエルはかつて所属していたバンド、ジェネシスの再結成コンサートを急遽開催するといったエピソードも残されています。

初期のWOMADは、ヨーロッパにおけるワールドミュージックの普及に大きく貢献しました。パキスタンのスーフィー歌手であるヌスラット・ファテ・アリ・ハーンをはじめ、多くの世界的なミュージシャンがWOMADでの出演を通じてその名を知られるようになり、ワールドミュージックブームの牽引役となりました。

規模の拡大と国際的な展開

WOMADはその後着実に規模を拡大し、約30年間で推定300万人の観客を動員しました。2013年には開催回数が160回に達し、ギネス世界記録によって「世界最大の国際音楽フェスティバル」として認定されています。

1988年からは、イギリス国外でも開催されるようになり、文字通り「ワールド」フェスティバルとしての性格を強めていきました。近年では、オーストラリア、ニュージーランド、スペイン、シチリア、イギリス、シンガポール、韓国、カナリア諸島など、世界各地で毎年7回から11回ほど開催されています。

一方で、アメリカ合衆国では、2001年の同時多発テロ事件以降、外国人演奏家の入国ビザ取得が困難になったことなどが影響し、開催が見送られています。

日本およびロシアでの開催

日本においては、1991年に横浜みなとみらい地区にあるパシフィコ横浜の開館記念事業として「ウォーマッド横浜フェスティバル」が開催されました。この会場で、WOMADはその後5年間にわたり開催されました。

ロシアでは、2013年に初めてWOMADが開催されました。会場となったのは、北カフカスの著名な保養地であるピャチゴルスク近郊の山腹です。このロシアでの初開催では、ロシア・トゥヴァ共和国のユニットであるフンフルトゥ、ロシアのフォークロック界で人気のペラゲーヤ、スペイン・バルセロナ出身のムヤヨ・リフ、パキスタンのアシフ・アリ・ザルダリ、ノルウェーのサミ族の音楽家マリ・ボイネなど、世界各地の多彩なアーティストたちがライブ演奏を行いました。音楽パフォーマンスに加え、地元料理が振る舞われたり、職人が伝統工芸品を制作する様子が披露されたりと、音楽以外の文化体験も提供されました。

WOMADは、単なる音楽コンサートにとどまらず、ワークショップや物品販売なども含む総合的な文化イベントとして、異文化理解と交流の促進に貢献し続けています。

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