ウクライナ中央ラーダ

ウクライナ中央ラーダ：独立への軌跡と現代ウクライナへの影響

ウクライナ中央ラーダ（Українська Центральна Рада）は、1917年3月、ロシア帝国からの独立や自治を求めるウクライナ各勢力の調整機関としてキエフに設立されました。ラーダはウクライナ語で「評議会」を意味し、多様な政治勢力を包含していました。当初はロシア臨時政府との協調路線をとり、段階的な自治拡大を目指していました。このアプローチは、ウクライナ国民の支持を得やすく、内紛を避ける現実的な戦略でした。

中央ラーダの中核勢力は、ウクライナ社会民主労働党（USDRP）とウクライナ社会革命党（UPSR）でした。これらの政党は、社会主義とウクライナ民族主義を掲げ、帝政時代から活動していました。しかし、ロシア化した都市では、中央ラーダへの反発も存在し、「労働者・兵士ソヴィエト」が結成されるなど、複雑な政治状況が展開しました。

第1次ウニヴェルサール（1917年6月23日）では、「ウクライナはロシア連邦領内の自治地域である」と宣言されました。これはロシア臨時政府の拒否反応に対する、ウクライナの明確な意思表示でした。同時に、中央ラーダは執行機関として「総書記局」を設立し、ヴォロディームィル・ヴィンニチェンコが総書記長、シモン・ペトリューラが軍事担当に就任しました。

第2次ウニヴェルサール（1917年7月16日）は、ロシア臨時政府との合意に基づき、中部ウクライナ5県の自治を認められました。これにより、中央ラーダはウクライナの政府として正式に認められ、長年のロシア支配下から本格的な自治を獲得しました。

しかし、10月のボリシェヴィキによる十月革命は、この状況を一変させました。中央ラーダはボリシェヴィキを拒絶し、第3次ウニヴェルサール（1917年11月20日）において、ウクライナ人民共和国の建国を宣言しました。これは事実上の独立宣言であり、イギリスやフランスなどから早期に承認されました。この宣言は、民主的な内容を盛り込み、帝政時代のウクライナ領土の回復を目指していました。

ボリシェヴィキは、ウクライナの産業の中心地であることを懸念し、中央ラーダの打倒を企てました。彼らは、中央ラーダを反革命勢力と批判し、ソヴィエト勢力を利用した内部崩壊工作や、ハルキウにウクライナ・ソヴィエト共和国を樹立するなど、様々な手段を用いました。

第4次ウニヴェルサール（1918年1月22日）では、ロシアとの連邦制を放棄し、ウクライナの完全独立を宣言しました。しかし、赤軍の侵攻によりキエフ陥落、ジトーミルへの撤退を余儀なくされました。

その後、中央ラーダはドイツ・オーストリアとブレスト＝リトフスク条約を結び、軍事支援を得てボリシェヴィキに反撃、領土の大部分を回復しました。しかし、ドイツ軍の横暴と食糧徴発は農民の不満を招き、4月29日、ヘーチマンの政変が発生、中央ラーダは解散しました。

中央ラーダの残党は、ディレクトーリヤを設立し、ウクライナ人民共和国の再建を目指しました。ペトリューラ率いる軍は一時キエフを奪還しましたが、内戦の激化、外国勢力の介入、チフスの流行などにより、1920年秋に崩壊しました。

その後も、中央ラーダの流れを汲むウクライナ民族主義運動は続き、様々な組織が活動しましたが、ソ連の支配下で弾圧されました。しかし、1991年のソ連崩壊後、ウクライナ独立にあたり、中央ラーダは独立ウクライナの正統性と歴史的アイデンティティの根拠として再評価され、国旗や国章などにもその影響が見られます。現在、中央ラーダは、現代ウクライナの形成に多大な影響を与えた重要な歴史的組織として認識されています。

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