ウクライナ独立正教会

ウクライナ独立正教会

ウクライナ独立正教会は、かつてウクライナに存在した正教会の一つです。正教会は原則として一国に一つの教会組織を置きますが、ウクライナ独立正教会は、そのような各国の正教会の一つでした。

概要

1921年、キエフの聖ソフィア大聖堂で創立会議が開かれ、ロシア正教会の司祭の一部がモスクワ総主教庁からの独立と自治教会の創立を宣言しました。ヴァスィーリ・ルィプキーウスクィイが初代府主教に選出されました。

しかし、ソ連時代に入ると、ウクライナ独立正教会は激しい弾圧を受けました。聖職者や信者はソ連の秘密警察によって多数が殺害されました。

1942年、第二次世界大戦下のドイツ占領下で、ポーランド正教会の援助により再創立されました。ポリカールプ・シコールシクィイが新たな府主教となりましたが、1944年にウクライナが赤軍によって占領されると、再び禁止され、ウクライナ東方カトリック教会と共に、ソ連国家保安委員会の弾圧を受けました。

そのため、聖職者と信者の一部はウクライナを逃れ、西欧、米国、カナダ、オーストラリアなどへ移住し、海外で活動を続けました。

1980年代末、ウクライナ独立運動の高まりとともに、ウクライナ独立正教会はウクライナに帰還し、活動を再開しました。1990年には、ムスティスラーウ・スクルィープヌィクがキエフと全ウクライナの府主教に選出されました。

ウクライナ独立正教会は、ウクライナ、西欧、米国、カナダなどで宗教団体として公認されていましたが、長らく正教会からは正統な教会として承認されていませんでした。しかし、2018年10月16日、コンスタンディヌーポリ全地総主教庁によって、ウクライナ正教会・キエフ総主教庁と共に正統性を承認されました。この動きに反対したロシア正教会は、コンスタンディヌーポリとの相互領聖を停止しました。

2001年時点では、11の主教区と404人の主教・司祭・輔祭を擁し、信者はウクライナの西部・中部に多く存在しました。2000年9月14日からは、メフォーディイ・クダリャコーウが府主教を務めました。

ウクライナ独立正教会は、ウクライナにおけるカトリック・正教の諸教会と並び、キエフ・ルーシ時代のキイウ府主教区の直接的な系譜を主張していました。独立正教会としての根拠の一つとして、コンスタンディヌーポリ総主教グリゴリオス7世から1924年に与えられたトモスを挙げ、その時に設立された教会組織の継承を主張していました。

2018年12月15日、ウクライナ正教会・キエフ総主教庁と統合し、新たに「ウクライナ正教会 (2018年設立)」が発足し、ウクライナ独立正教会はその歴史に幕を閉じました。

参考文献

伊東孝之,井内敏夫,中井和夫. 『ポーランド・ウクライナ・バルト史』. 山川出版社, 1998.12. (新版世界各国史 ; 20)

関連項目

ウクライナ正教会 (2018年設立)
ウクライナ正教会・キエフ総主教庁
ウクライナ正教会 (モスクワ総主教庁系)
キエフ府主教区
ウクライナ教会
ウクライナの宗教

外部リンク

ウクライナ独立正教会の公式サイト（ウクライナ語）
* ウクライナ正教会についての基本知識まとめ - 誤報や偏向への指摘を通じた、考え得る最短のまとめ（日本語）

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