ウジェニー・ニボワイエ

ウジェニー・ニボワイエ：フランスのフェミニズムの先駆者

ウジェニー・ニボワイエ（1796年9月11日 - 1883年1月6日）は、19世紀フランスにおいて、作家、ジャーナリスト、翻訳家、そして社会主義フェミニストとして活躍した人物です。彼女は、1848年の二月革命を機に女性の自由と権利のために立ち上がった「1848年の女性たち」の中心人物であり、その運動の機関紙『女性の声』を創刊し、主宰しました。

生い立ちと背景

ニボワイエは、薬剤師の父と、百科全書編纂者の祖父を持つ家庭に生まれました。プロテスタントであり、ボナパルティストであった一家は、リヨンに移り住みます。そこで彼女は、弁護士のポール＝ルイ・ニボワイエと出会い結婚。1825年には息子ジャン＝アレクサンドル・ポーランが誕生しました。ポーランの子は国際私法専門の法学者として知られています。

サン＝シモン主義との出会い

1829年、ニボワイエは夫とともにサン＝シモン主義に入信し、女性指導員として活動します。しかし、サン＝シモン教の分裂後、彼女はデジレ・ゲーやジャンヌ・ドロワンらと共にフーリエ主義に転向しました。

『女性の助言者』紙の創刊

リヨンに戻ったニボワイエは、1833年に週刊新聞『女性の助言者』を創刊。これは、労働者と女性の教育を目的としたもので、彼女自身も多くの記事を執筆し、女性の教育の必要性や労働条件の改善を訴えました。また、無償の女性教育講座「アテネ・デ・ファム」を設立しますが、リヨンでの労働者の蜂起により閉校を余儀なくされます。この蜂起を支持したニボワイエは、著書『リヨン事件の経緯』で、貧困が蜂起の原因であると指摘し、労働の組織化の必要性を訴えました。

社会改革運動と文筆活動

パリに戻ったニボワイエは、女性紙への執筆や奴隷制廃止運動などの社会改革運動に積極的に参加。「キリスト教道徳協会」の懸賞論文で3度の受賞を果たし、死刑廃止や監獄制度改革に関する論文を発表しました。また、イギリス小説の翻訳も手がけ、チャールズ・ディケンズの『ピクウィック・クラブ』をフランスで初めて翻訳・出版しました。

平和主義への傾倒

ニボワイエは、サン＝シモン主義やフーリエ主義の影響を受け、平和的な社会体制への移行における女性の役割を重視。「平和協会」の設立や、平和主義新聞の創刊に尽力しました。この新聞では、死刑廃止や監獄制度改革の問題に加え、労働者の「賃金奴隷制」を批判し、労働の組織化による貧困対策を訴えました。

1848年の二月革命と『女性の声』

1848年の二月革命後、ニボワイエは女性運動の中心人物として、女性の権利を主張する『女性の声』を創刊。この新聞は、女性の市民権、参政権、労働問題、教育問題、離婚制度など、女性に関するあらゆる問題を議論する場となりました。しかし、『女性の声』は短期間で廃刊となり、ニボワイエ自身も風刺の対象となりました。

晩年

晩年は作家ダッシュ伯夫人の著書に対する反論として『女性の真の書』を執筆。保守的な傾向もみられましたが、長年の女性解放運動の経験に基づいた女性論を展開しました。1883年1月6日、パリで86年の生涯を閉じました。

ウジェニー・ニボワイエは、その多岐にわたる活動を通して、フランスのフェミニズム運動の先駆けとなり、後世に大きな影響を与えた人物として記憶されています。

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