ウスイロイルカ属

ウスイロイルカ属（Sousa）は、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科に分類される海生哺乳類です。この属のイルカは、背中に瘤状の隆起があることと、成長するにつれて大きく伸びる背びれが特徴です。

分類

ウスイロイルカ属の分類は、長年にわたり専門家の間で議論の対象となってきました。かつては、シナウスイロイルカとアフリカウスイロイルカの2種のみと考えられていましたが、その後の研究により分類が見直されています。

現在、以下の4種がウスイロイルカ属に分類されています。

シナウスイロイルカ（Sousa chinensis）：インド太平洋に広く分布。
ウスイロイルカ（Sousa plumbea）：インド洋に生息。
オーストラリアウスイロイルカ（Sousa sahulensis）：オーストラリア近海に生息。
アフリカウスイロイルカ（Sousa teuszii）：大西洋東部に生息。

これらの分類は、Committee on Taxonomy (2024) の分類、英名と、田島・山田 (2021) の和名に基づいています。

分類に関する歴史的経緯

1990年代半ばまでは、多くの研究者はウスイロイルカ属をシナウスイロイルカとアフリカウスイロイルカの2種のみと考えていました。しかし、1998年にRiceによって発表された系統分類法において、シナウスイロイルカがシナウスイロイルカ（S. chinensis）とウスイロイルカ（S. plumbea）に分割され、アフリカウスイロイルカ（S. teuszii）と合わせて計3種に分類されました。この時、シナウスイロイルカとウスイロイルカの境界はインドネシアのスマトラ島とされましたが、交雑は起こりうると考えられています。

その後、オーストラリアの研究者であるGraham Rossは、形態学的研究と遺伝子解析の結果から、S. chinensis は単一種である可能性を示唆しました。しかし、2014年にThomas A. JeffersonとHoward C. Rosenbaumによってオーストラリアウスイロイルカ（S. sahulensis）が新たに記載され、現在の4種分類に至っています。

このように、ウスイロイルカ属の分類は研究が進むにつれて変化しており、今後も新しい発見によって再分類される可能性が残されています。

保護状況

ウスイロイルカ属の全ての種は、絶滅の危機に瀕している種を保護するための国際的な条約であるワシントン条約の附属書Iに掲載されています。このことは、これらのイルカが非常に脆弱な立場にあり、保護の必要性が高いことを示しています。人間活動による海洋汚染、漁業による混獲、生息地の破壊などが、ウスイロイルカ属の生存を脅かす主な要因となっています。したがって、これらのイルカを保護するためには、国際的な協力と継続的な保全活動が不可欠です。

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