ウスコミミガイ

ウスコミミガイ（Laemodonta exaratoides）の概要

ウスコミミガイは、オカミミガイ科に属する巻貝であり、その学名は Laemodonta exaratoides です。この種は日本列島ならびに朝鮮半島の南部地域に生息しており、特に内湾海岸の潮間帯上部に見られる非常に小さな貝です。成貝のサイズは通常殻長が5から7mm程度で、外観は太い紡錘形を特徴とします。具体的には、殻の色は黄褐色で薄く、表面には微細な螺肋が見られます。

形態的特徴

ウスコミミガイの殻の底の中央には小さな窪みがあり、ここには臍孔が存在します。その周りには盛り上がった縫帯が見受けられます。殻口には4つの歯が備わっており、内唇に2つ、軸唇に1つ、外唇の内部に1つがありますが、これらはそれほど発達していません。そのため、殻口は比較的広くなっています。また、若い個体では短い毛に覆われることがありますが、成体になるとこれらは目立たなくなったり、完全になくなったりすることが一般的です。さらに、老成個体は殻表が磨耗し、毛や螺肋が消失し、殻の色が白くなることがあります。

生息環境と生態

このウスコミミガイは、岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島、そして朝鮮半島の南部に分布しています。日本の海産オカミミガイ類の中では、ナギサノシタタリに次ぐ広範な分布を誇りますが、日本以外での記録は少ないです。この種は内湾性の環境を好み、波静かな潮間帯上部に棲息していますが、砂泥干潟や外洋に面した小さな入江などでも見受けられます。ウスコミミガイは大きな転石の下など、温度と湿度が一定に保たれる場所に隠れることが多く、地上を這う行動はほとんどありません。生息域では、カタツムリに似た短い糞が観察され、同じ場所には他の貝類や甲殻類も共存します。

繁殖特性

ウスコミミガイは、雌雄同体であるため、他の個体と交尾して両方が卵を産むことができます。日本での繁殖期は主に夏季であり、生息する転石の背面などに土で形成されたドーナツ状の卵嚢を産みます。

人間との関係

環境省のレッドリストによれば、ウスコミミガイは「準絶滅危惧（NT）」に指定されています。また、各都道府県においてもレッドリストに挙げられています。特に静岡県、兵庫県、宮崎県では絶滅危惧I類、香川県、福岡県、大分県、長崎県では絶滅危惧II類に分類されています。ウスコミミガイは分布域が広く、生息環境が多様であるため、個体数も比較的安定しているとされていますが、潮間帯の環境の変化、特にコンクリート護岸の造成などにより、生息地が縮小していることが懸念されています。これにより、各地でその生息地が失われつつあるため、保護が不可欠であると考えられています。

ウスコミミガイは、その生態や形態の特徴から自然環境の観察において重要な役割を果たしている貝です。

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