ウスタシャ

ウスタシャ（Ustaše）

ウスタシャは、20世紀のクロアチアにおいて存在したファシスト政党であり、民族主義的な団体でもありました。この団体は、特に第二次世界大戦中にドイツと同盟を結び、大規模な虐殺行為を行ったことによって悪名高い存在となりました。ウスタシャは、アンテ・パヴェリッチを指導者として、クロアチア人による独立した国民国家の成立を目指しました。その政治的な綱領には農民を中心とした反資本主義の理念が掲げられていましたが、私有財産制も認められるなど、矛盾を抱えていました。また、宗教的にはローマ・カトリックの影響を強く受けていたのが特徴です。

背景

第一次世界大戦後に構成されたユーゴスラビア王国は、建国当初からセルビア人によって支配され続けており、強い民族意識を持つクロアチア人たちの反発を招いていました。ウスタシャは、この国家に対するクロアチア人の反セルビア感情を利用し、勢力を拡大しました。指導者のパヴェリッチは、暴力を辞さない姿勢で民族意識を煽り、他の反ユーゴスラビア勢力と連携しながらテロ活動を展開しました。

1934年、ウスタシャと内部マケドニア革命組織の共謀により、ユーゴスラビア国王アレクサンダル1世が暗殺される事件が発生しました。これに対抗する形でユーゴスラビア政府はウスタシャを取り締まるも、クロアチア人による暴力的な活動は収まることなく続きました。

ナチスとの関係

ウスタシャは、当初はイタリアのファシスト党首ムッソリーニからの援助を受けていましたが、時が経つにつれ、ナチス・ドイツとの関係を強化しました。1941年にナチスがユーゴスラビアに侵攻したことを契機に、クロアチア独立国が樹立されます。パヴェリッチはこの独立を受け、国家元首となり、独裁体制を創設しました。全ての他の政党は非合法化され、ナチス型の親衛隊も設立されました。

さらに、国内には強制収容所が建設され、セルビア人をはじめ、ユダヤ人やジプシー、さらにはクロアチア人の反対派まで大規模に逮捕・拘束されました。特にヤセノヴァッツ収容所は「バルカンのアウシュヴィッツ」と呼ばれ、ウスタシャの部隊は地方でのセルビア人虐殺を行い、カトリックの司祭を同行させることで、自らの行為を正当化していました。

これらの残虐行為は、ウスタシャを支援したナチスの保安警察さえも驚愕させるものであり、「セルビア人迫害の先鋭化が、クロアチアを制御不能な地域とする恐れがある」と報告されるほどでした。この凄惨な状況下で、1945年までクロアチア国内での暴力の連鎖が続き、推定で70万人から100万人のセルビア人が命を落としたとされています。正確な数は不明なものの、この時期のクロアチアは急激な民族紛争の中にありました。

解体とその後

1945年、クロアチア独立国は崩壊し、パヴェリッチは南米やスペインへと逃れました。彼はフランコ政権の保護を受けながら、祖国復権の夢を追い続けましたが、1957年に襲撃を受けて重傷を負い、2年後に亡くなりました。ウスタシャの指導者として、短期間ながらヒトラーの支援を受けた彼は、暴力による政策がもたらす民族間の恨みが、後のユーゴスラビア紛争の遠因であるとされてきました。

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